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本編
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「今、頭の中ぐちゃぐちゃで……少し整理したいの。だから」
「舞、話を聞いてくれ」
腕を掴まれて、反射的に大声で叫んでいた。
「やめて!!」
ぎょっとしたように、周囲の登校中の生徒たちの視線が注がれる。
恥ずかしさと罪悪感で、顔が熱くなった。
(怒鳴るつもりなんてなかったのに)
このままじゃいけない。
今は爽君とも紘ちゃんとも距離を置いて、一人で考える時間が必要だ。
そうでなければ、頭がおかしくなってしまう。
そんな気がした。
再び爽君を見ると、彼の顔からは血の気が引いていた。
紙のように真っ白な顔で、半開きになった唇が震えている。
冷静に、冷静に。
そう自分に言い聞かせ、私はもう一度言った。
「落ちついたら、私から連絡する。それまで放っておいてくれる?」
苦い汁を飲んだように、爽君の表情は歪んでいる。
しばらくして大きく息をつくと、抑揚のない声が言った。
「舞がそう言うなら、できる限り待つつもりだ。だけど」
「だけど?」
聞き返すと、爽君は目を逸らした。
「舞、話を聞いてくれ」
腕を掴まれて、反射的に大声で叫んでいた。
「やめて!!」
ぎょっとしたように、周囲の登校中の生徒たちの視線が注がれる。
恥ずかしさと罪悪感で、顔が熱くなった。
(怒鳴るつもりなんてなかったのに)
このままじゃいけない。
今は爽君とも紘ちゃんとも距離を置いて、一人で考える時間が必要だ。
そうでなければ、頭がおかしくなってしまう。
そんな気がした。
再び爽君を見ると、彼の顔からは血の気が引いていた。
紙のように真っ白な顔で、半開きになった唇が震えている。
冷静に、冷静に。
そう自分に言い聞かせ、私はもう一度言った。
「落ちついたら、私から連絡する。それまで放っておいてくれる?」
苦い汁を飲んだように、爽君の表情は歪んでいる。
しばらくして大きく息をつくと、抑揚のない声が言った。
「舞がそう言うなら、できる限り待つつもりだ。だけど」
「だけど?」
聞き返すと、爽君は目を逸らした。
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