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本編

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(紘ちゃんって、意外と恋愛経験豊富?)

彼女がいたりしたことは知っていたけど、きちんと恋愛話をしたことがなかったので、何となく紘ちゃんは奥手か恋愛に興味がないんだと思っていた。

でも今の感じからすると、女の人の扱いは上手な気もする。

もしかすると、爽君みたいに派手じゃないけど、紘ちゃんも相当モテるんじゃないだろうか。

「舞ちゃんはどうなの?」

唐突に聞かれて、私は言葉につんのめった。

「え?」

ぽかんと口を開けていると、紘ちゃんは言い聞かせるように繰り返した。

「舞ちゃんは、爽君のことが好きなの?」

正面切って聞かれるとは思わず、背筋に汗が浮かぶ。

「えーっと……」

爽君が自分を好きかどうかに確信が持てなくて、私自身の気持ちまで辿りついていなかったというのが本音だった。

驚きと、疑い。

爽君のプロポーズから今まで、私の心の中にあったのはその言葉だけだった。

「……よく分かんないな」

だから、私は本音を答えた。

何となく紘ちゃんの表情が見れなくて、目を伏せる。

「そっか」

紘ちゃんはそう言うと、それ以上何も聞いてこなかった。

私はほっとして、顔を上げる。

すると、薄茶色の柔らかい髪に、ぐるぐると巻かれた白い包帯が目に入った。

「ねえ、紘ちゃん」

「ん?」

「非常階段から落ちたときのこと、覚えてる?」

紘ちゃんは微笑んだ。

その微笑みは、今まで見た彼のどんな種類の表情とも異なっていた。

「落ちたんじゃなくて、突き落とされたんだよ」

「え?!」

さらりと言った紘ちゃんに、私はぎょっとした。

(勝手に落ちるなんておかしいと思ってたけど、やっぱりそうなの?)
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