ディエス・イレ ~運命の時~

凪子

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本編

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「何なの?」

嫌な予感が足元から這い上がってきて、私は半ば叫んでいた。

「何があったの?」

「舞」

爽君も、背後にいるウェイターも、世界の終わりが来たような顔をしている。

次の言葉を聞きたくてたまらない気持ちと、耳を塞いでしまいたい気持ちが心の中でせめぎ合った。

「紘二が非常階段から落ちた」

「えっ」

私は反射的に立ち上がっていた。

爽君は私の前に回り込むと、両肩を押さえて席に座らせた。

「落ちつけ、舞」

「いやっ、離して。離してよ!!」

駄々をこねる子供のように暴れたけれど、力強い腕はびくともしない。

「紘ちゃんは無事なの? 今どこ? ねえ教えて!!!」

爽君は真っ青な顔で、震える唇を何度も噛みしめる。苦しそうな吐息が喉から漏れた。

「頭を強く打って、意識不明の重体だ。今、病院に搬送された」

「そんな……」

どうして。なぜ。そんな問いかけが頭に駆け巡る。

トイレに行くといって、軽い足取りでレストランを出ていった紘ちゃん。

それが、非常階段から転落?

頭がくらくらして、視界が急速に回転を始める。

「舞? ……舞っ!!」

顔を上げていられなくて、テーブルに顔を伏せようとしたのだが、そのまま椅子ごと床に倒れてしまったようだった。

「しっかりしろ、舞!」

爽君の叫び声を聞いたのを最後に、私の意識は途切れた。
































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