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本編

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「からかってるの?」

自分の胸を人さし指で指して、おずおずと尋ねる。

爽君は首を振った。

「違う。本気だ。日本に戻ったら、最初にお前に会って結婚を申し込もうと思ってた」

「な……何で?」

爽君は口を引き結んで黙っている。

からかわれている可能性は、今は1%以下になった。

もしそうなのだとしたら、そろそろ「嘘だよ~」と言ってもいい頃だ。

それに、いくら何でも、こんなひどい嘘を爽君がつくとは思えなかった。

だったら次に浮かんでくるのは、強烈な疑問だった。

「だって……私のこと、いつも子供扱いしてるじゃない」

「そうだな」

「今日だって、ガキって言ったじゃない」

「ああ」

「昔からいつも爽君の一番仲良しは紘ちゃんで、夜中に家を抜け出して冒険したときも、私は連れてってもらえなかった。フラれてばっかりだったのに、それがいきなり何で?」

ああ――話していたら昔の記憶が蘇って、胸が痛くなった。

幼稚園の頃から私は爽君と紘ちゃんが大好きで、真ん中にウエディングドレスを着た私、右に紘ちゃん、左に爽君を描いて、三人で結婚式をしている絵を描いた。

すると、それを見た爽君は露骨に嫌な顔をして、私の絵をびりびりに破いてしまったのだ。

私は泣きまくり、それから何日かは爽君と口もきかなかった。

いわゆる、『絶交』というやつだ。

すぐに紘ちゃんが私の家にやってきて、慰めてくれた。

「僕が舞ちゃんをお嫁さんにしてあげるからね」と。

遠い記憶だ。普段どおりの高校生活を送っていたら、決して思い出すことはないような。
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