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本編

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(いつもこう。私が爽君にいじめられて泣いてると、紘ちゃんがひょっこり現れて、かばってくれた)

幼い日、お互いの家や公園で遊んだことを思い出す。

とにかく相手は五歳も年上なものだから、どんなゲームをしても負けるのは私だった。

(でも結局、爽君と紘ちゃんが二人でどんどん先に行っちゃうんだよね……)

紘ちゃんは私より四つ上だし、もともと爽君の家の隣に住んでいた。

そこに私たち家族が引っ越して親同士が仲良くなり、三人で遊ぶようになった。

けれど、やっぱり男の子同士のほうが話が合うのか、よく仲間外れにされたものだ。

面白いことを見つけると、すぐに走り出してしまう爽君。

何とかついていける紘ちゃんは、たまに振り返って私を待ってくれる。

でも、私があんまりにも手足が小さくて、力もないと知ると、かわいそうな目をして「ごめんね」と謝る。

そして結局、私を置いていってしまう。

取り残された私は、びゃーびゃーと大声で泣いたものだった。

(あの頃に戻りたい……とは思わないけど)

今の私たちの間に流れる空気は、やっぱり七年前とはどこか違っている。

前菜を口に運びながら、私は注意深く二人の様子を見守っていた。

「何だよ、幽霊でも見たような顔して」

赤ワインを造作なく喉に流し込みながら、爽君が言う。

「久しぶりの俺に緊張してるのか? まあ分からなくもないけどな」

私はわざと深い溜息をついた。

「アメリカ行って、変な方向にパワーアップして帰ってきたって感じだね」

ね、紘ちゃん? と目で問うと、彼は純粋な眼差しで爽君を見つめている。

そして、はにかんだような笑顔で言った。

「俺、爽兄のそういうところ、好きだよ」

金属質の音が響き、顔を上げると、爽君がフォークを取り落としていた。
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