ディエス・イレ ~運命の時~

凪子

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本編

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「お邪魔……だったかな」

紘ちゃんは困ったように眉尻を下げて笑った。

「ううん、そんなことないよ」

爽君が答える前に、私が答えていた。

隣を見て、まだ言葉に詰まっている爽君を見て驚いた。

さっきまでよく回っていたはずの口が、今はボンドでくっつけたみたいに動かない。

(何で?)

小さい頃から勉強も運動も一番で、何をするにもいつも爽君が最初だった。

思いついたら即行動で、私たち二人は引っ張り回されてばかりだった。

煙のような不安は焦りに変わり、焦りは苛立ちへと変わる。

(何で、紘ちゃんに何の言葉もかけてあげないの? どうして意地悪するの?)

気まずい沈黙に、さすがの紘ちゃんも居たたまれなくなったのか、

「あ、じゃあ俺、帰るね」

「待って!」

私は紘ちゃんのシャツの裾を掴んで引きとめた。

「紘ちゃんが帰るんだったら私も帰る」

「舞ちゃん」「舞」

二人の台詞がユニゾンした。

「紘ちゃんをハブにして、二人でご飯なんて嫌」

何だか私は腹が立って、どうしようもなくむかむかして、意地でも三人でご飯に行ってやると決め込んでいた。

どうするの? と目で訴えかけると、爽君は深い溜息をついた。

そして、ポケットからスマホを取り出し、どこかに電話をかける。

切った時には、普通の表情に戻っていた。
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