ディエス・イレ ~運命の時~

凪子

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本編

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「久しぶりだな、舞」

爽君はびっくりするぐらい優しい笑顔で言って、私に手を伸ばした。

握手するのかと思って手を差し出すと、彼は私の手に何かを乗せた。

「え? 何?」

「犬のうんこ」

「きゃあああああああっ!!!!!!」

悲鳴を上げて茶色い物体を手からふるい落とす。爽君は爆笑した。

「馬鹿だな~お前。そんなわけねーじゃん!! ポケットに犬のうんこなんか入れたら、俺の高い服が汚れるだろうが」

よく見ると、芝生の上に落ちているのは包み紙に入ったチョコレートだった。

それっぽい色をしているので、すっかり騙されてしまった。

「もう、爽君の馬鹿!!」

叫んだら涙が出そうになった。

(忘れてた。爽君って昔からこんな感じだった……)

わがままで傍若無人で、いつも私をいじめたりこき使ってくる、最悪の暴君。

アメリカに渡って七年経っても、何も変わっていないらしい。

(帰ってこなきゃよかったのに)

「お前今、俺が帰ってこなきゃよかったって思ったろ」

「うぇっ?!」

喉がへしゃげたような、変な声が出た。
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