女子高生占い師の事件簿

凪子

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【4】トランジット

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恵果はタクシーを拾って、ようやく閉店間際の喫茶『オリオン』に帰ってきた。

長い一日だった――いろんな意味で。

ため息をつきながらドアを開ける。

中を見渡すと、中年の男がすっと立ち上がり、恵果と入れ違うように店を出ていった。

「……」

恵果は警戒心を滲ませて辺りを窺う。

カウンターにいる叔母のみどりに変わった様子はない。

「ただいま、みどりさん」

「おかえり。随分と遅かったね」

「まあね。加奈ちゃんは?」

「上で宿題でもしてると思うけど、何かあったの?顔色が悪いよ」

恵果は頬に手を当てた。

「照明のせいじゃない?」

そのとき、恵果はカウンターの端に座る律に気がついた。

「……りっちゃん…………」

その姿を見た瞬間、何とも言えない安堵感に、腰から力が抜けてへたり込みそうになった。

自分で自分が信じられなかった。

恵果は慌てて自分を叱咤すると、律の隣に座った。

みどりに「後は任せて」と声をかけ、席を外してもらう。
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