女子高生占い師の事件簿

凪子

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【4】トランジット

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今回、独占禁止法の改正をしようとしているのは、大沢巳喜男の息子だけではない。

もともと与党が中心になって動いていた。

日本初の『司法取引』を導入するという斬新さが一時期話題になっていたが、当然足を引っ張る存在も多く、議論は難航したままだった。

確かに、闇カルテルの取り締まりが強化されれば、大企業としては迷惑この上ないだろう。

リーニエンシーという『囚人のジレンマ』を利用した課徴金免除制度も厄介だ。

公正取引委員会の権限が強化されれば、摘発の率も高まる。

だが、まだ衆議院議員にもなっていない一候補者を潰すのに、その理由はあまりに大げさだ。

疑念を隠せない恵果に、津本恭平は笑ってつけ足した。

「ま、ここまでは建前ってやつで。本音は、こっちの陣営から送り込む議員の数を増やしたいってことだろうけどね。藤森の息のかかった人間は多い。政財界、警察、医療、芸能、マスコミ、法曹界、その他あらゆる分野を網羅している」

恭平のスーツの襟には、Fの社員証が光っていた。

恵果はそれを見やると、息をついた。

「そんな裏事情を私に喋っていいのかしら」

「いいも何も、もう知ってただろ?君だって、俺と同じ内部の人間であるわけだし」

恵果は嫣然と笑った。

「あら、よくご存知ね。末端のあなたが」

「末端とはひどいな」

恭平は多少尻込みするように笑った。

「君は数年前から、藤森にとって喉首の棘だ。ある意味、俺たちの中では有名だよ」

「大沢巳喜男に脅迫状を送ったのもあなたね」

淡々と指摘され、恭平は驚きを隠せなかったのか、大きく目を見開いた。
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