女子高生占い師の事件簿

凪子

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【4】トランジット

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「僕は君のために派遣された交渉人ネゴシエーターでね。これから君と連絡を取り、話し合い、それを報告して企業と君をつなぐ役割を果たすことになる。改めて、どうぞよろしく」

差し出された手を恵果は避けて、運ばれてきたローズヒップティーに口をつけた。

「その必要はないわ。あなたと会うのも、話をするのもこれっきりよ」

「まあまあ。そう頑固なこと言わないでよ。何も、とって食おうってわけじゃない」

「津本さん。世の中には、顧客をえり好みしていい職業と、そうでない職業があるのよ。私は、少しでも多くの人を占うのがお仕事なの。お分かりいただけるかしら」

「立派な使命感をお持ちのようだね。でも肝心の顧客は、君の存在意義をそのように考えてくれてるかな?
一度占えば、何度も君の元に訪れ、君を手に入れようとする。違うかい?」

恵果はサンドイッチを飲み込み、津本恭平の顔を見た。

「君が今日占った、大沢巳喜男だってそうだ。自分どころか、息子の人生まで君に背負わせようとしている」

恵果は内心舌打ちした。

どこまで知っているのか。行動を逐一監視していたとしか思えない。

「……依頼するのは自由よ。受けるかどうかは別問題だけど」

「大沢の息子は衆院選に出馬するそうだね。実は、僕らの企業が後押しして、あれの対抗馬として若手のサラブレッドを出馬させようと支援してるんだよ」

津本恭平は声を潜めた。

恵果は頬杖をついて大儀そうに言う。

「それで?」

「いや、大沢の息子が掲げてる公約が問題でね。『独占禁止法改正』……されると困っちゃうんだよね、こっちと
しては。まあ公約なんて破るためにあるようなもんだけど、一応ね。転ばぬ先の杖ってやつで」

恵果は目を細めた。
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