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【3】ホラリー
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しおりを挟む「どうして尾けようと思わなかったの?りっちゃんなら絶対やると思ったけど」
「何だよその偏見。女を尾行なんてできっかよ。それに俺、尾行したことないし。相手は辣腕弁護士だぞ?見つかるに決まってるだろ」
その後、律はその足で喫茶【オリオン】へ向かい、恵果に噂好きのおばちゃんよろしく事の一部始終をまくし立てたのだった。
先に店を訪れていた比呂が、楽しそうに口を挟んだ。
「律はああいう綺麗系が好きだったんだなー。でもストーカーはやめとけよ?」
「いや、俺はどっちかっていうと綺麗系よりかわいい系が……って、そんな話してんじゃねえよ!!問題はそこじゃないだろ、浮気だよ、浮気!!あの優男、やっぱりろくな奴じゃなかったぜ」
律は鼻息も荒く主張した。
「いや、まだ浮気だと決まったわけじゃ」
比呂が宥めるように言ったが、律は引き下がらなかった。
「あれは絶対、妹や親戚って感じじゃなかった。何かこう、小柄でかわいらしい巻き毛な感じでさ、色白で大人しそうで……こいつと正反対みたいな」
指さされた恵果が、律のシャーペンを取って手の甲に突き刺した。
「痛ってぇ!!」
「これぐらいですんでよかったと思ってね。ここには包丁だってあるのよ」
「鬼かお前は。冗談に決まってるだろうが!」
涙目で律は叫んだ。
「もし本当の浮気だったら、めぐみは逆上して問い詰めるタイプだと思うけどね」
比呂の、仁科めぐみに対する馴れ馴れしい呼称に突っ込む気にもなれず、律は首を振った。
「だから恐ろしいんだろうが。あれはきっと、証拠をつかもうとしてるんだ。弁護士だから、そんなところまで仕事入っちゃってるんだぜ。名誉毀損とか何とか言って訴えて、あのへなちょこ野郎から何百万も巻き上げるに決まってる」
律が熱弁をふるう横で、恵果はそれを無反応なまま聞き流していた。
「何だよ恵果。文句があるなら……」
話を振りかけた律は、鈴の音と共に入ってきた人物にあんぐりと口を開いた。
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