女子高生占い師の事件簿

凪子

文字の大きさ
上 下
65 / 138
【2】リロケーション

65

しおりを挟む
「調子に乗った私が悪かったんです。こんなに楽して、こんなに簡単にお金が稼げるんだって」

亜子は自分の両手を見つめる。

「私の学校はみんなお金持ちで……こうでもしないと、お金が足りなかったんです。遊んだり、ご飯食べたり、服とかアクセサリーも買えなかった。見捨てられたくなかった。友達と付き合っていくだけのお金が欲しくて」

そうやって秘密にお金を稼いでいることを知ったら、両親が悲しむ。律に知られたら軽蔑される。

分かっていたけれど、亜子には引き返すだけの勇気がなかった。

「りっちゃんなら、私の様子がおかしいと気づいて、ついてきてくれるって思った。私は本気では振り払わなかった。りっちゃんのことより、自分の身のほうがかわいかったんです」

恵果は亜子の懺悔の全てを、否定しなかった。

「お金で買える友達もいるけど、両親は買えないよ?もちろん、りっちゃんもね。あなたを心底愛して、心配してくれる人たちを大切にしようよ」

恵果は微笑んだ。

「学校の友達が離れていってもいいじゃん。これからは、私が亜子ちゃんの友達になるし。言っとくけど、私はお金では買えないよ?」

彼女が試しているのは、もっと心の奥にあるものだ。

亜子は深く頷き、恵果の瞳を見た。もう視線は揺るがない。

「私、もうりっちゃんを好きでいる資格、ないですね」

「あら、好きでいるのに資格なんか要らないでしょ?まあ、でも、あの人と亜子ちゃんじゃ吊り合わないか」

恵果は軽く片目をつむった。

亜子は淋しげに笑って、ゆるくかぶりを振った。

「りっちゃんは、昔から私の憧れそのものだったんです。今もずっと」

律は常に自分ではなく、はるか遠い場所を見つめている。昔も、今も。

その視線が自分と重なることは、きっと生涯ないのだろう。

自分と律は誰よりも近く、遠い場所に立っているのかもしれなかった。

「……あの人は私の気持ちには、ちっとも気づいてくれませんでしたけど」

切なさが胸を襲う。

――その痛みを反芻しながら、亜子は家路についた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

結婚したくない腐女子が結婚しました

折原さゆみ
キャラ文芸
倉敷紗々(30歳)、独身。両親に結婚をせがまれて、嫌気がさしていた。 仕方なく、結婚相談所で登録を行うことにした。 本当は、結婚なんてしたくない、子供なんてもってのほか、どうしたものかと考えた彼女が出した結論とは? ※BL(ボーイズラブ)という表現が出てきますが、BL好きには物足りないかもしれません。  主人公の独断と偏見がかなり多いです。そこのところを考慮に入れてお読みください。 ※この作品はフィクションです。実際の人物、団体などとは関係ありません。 ※番外編を随時更新中。

あやかし雑草カフェ社員寮 ~社長、離婚してくださいっ!~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 令和のはじめ。  めでたいはずの10連休を目前に仕事をクビになった、のどか。  同期と呑んだくれていたのだが、目を覚ますと、そこは見知らぬ会社のロビーで。  酔った弾みで、イケメンだが、ちょっと苦手な取引先の社長、成瀬貴弘とうっかり婚姻届を出してしまっていた。  休み明けまでは正式に受理されないと聞いたのどかは、10連休中になんとか婚姻届を撤回してもらおうと頑張る。  職だけでなく、住む場所も失っていたのどかに、貴弘は住まいを提供してくれるが、そこは草ぼうぼうの庭がある一軒家で。  おまけにイケメンのあやかしまで住んでいた。  庭にあふれる雑草を使い、雑草カフェをやろうと思うのどかだったが――。

ぐるりぐるりと

安田 景壹
キャラ文芸
あの日、親友と幽霊を見た。それが、全ての始まりだった。 高校二年生の穂結煌津は失意を抱えたまま、友の故郷である宮瑠璃市に越して来た。 煌津は宮瑠璃駅前に遺棄された捩じれた死体を目にした事で、邪悪な感情に囚われる。心が暴走するまま悪を為そうとした煌津の前に銀髪の少女が現れ、彼を邪気から解放する。 だが、この日から煌津は、宮瑠璃市に蠢く邪悪な霊との戦いに巻き込まれていく――……

たとえ性別が変わっても

てと
BL
ある日。親友の性別が変わって──。 ※TS要素を含むBL作品です。

このたび、小さな龍神様のお世話係になりました

一花みえる
キャラ文芸
旧題:泣き虫龍神様 片田舎の古本屋、室生書房には一人の青年と、不思議な尻尾の生えた少年がいる。店主である室生涼太と、好奇心旺盛だが泣き虫な「おみ」の平和でちょっと変わった日常のお話。 ☆ 泣き虫で食いしん坊な「おみ」は、千年生きる龍神様。だけどまだまだ子供だから、びっくりするとすぐに泣いちゃうのです。 みぇみぇ泣いていると、空には雲が広がって、涙のように雨が降ってきます。 でも大丈夫、すぐにりょーたが来てくれますよ。 大好きなりょーたに抱っこされたら、あっという間に泣き止んで、空も綺麗に晴れていきました! 真っ白龍のぬいぐるみ「しらたき」や、たまに遊びに来る地域猫の「ちびすけ」、近所のおじさん「さかぐち」や、仕立て屋のお姉さん(?)「おださん」など、不思議で優しい人達と楽しい日々を過ごしています。 そんなのんびりほのぼのな日々を、あなたも覗いてみませんか? ☆ 本作品はエブリスタにも公開しております。 ☆第6回 キャラ文芸大賞で奨励賞をいただきました! 本当にありがとうございます!

ぞんびぃ・ぱにつく 〜アンタらは既に死んでいる〜

されど電波おやぢは妄想を騙る
SF
 数週間前、無数の巨大な隕石が地球に飛来し衝突すると言った、人類史上かつてないSFさながらの大惨事が起きる。  一部のカルト信仰な人々は、神の鉄槌が下されたとかなんとかと大騒ぎするのだが……。  その大いなる厄災によって甚大な被害を受けた世界に畳み掛けるが如く、更なる未曾有の危機が世界規模で発生した!  パンデミック――感染爆発が起きたのだ!  地球上に蔓延る微生物――要は細菌が襲来した隕石によって突然変異をさせられ、生き残った人類や生物に猛威を振い、絶滅へと追いやったのだ――。  幸運と言って良いのか……突然変異した菌に耐性のある一握りの極一部。  僅かな人類や生物は生き残ることができた。  唯一、正しく生きていると呼べる人間が辛うじて存在する。  ――俺だ。  だがしかし、助かる見込みは万に一つも絶対にないと言える――絶望的な状況。  世紀末、或いは暗黒世界――デイストピアさながらの様相と化したこの過酷な世界で、俺は終わりを迎えるその日が来るまで、今日もしがなく生き抜いていく――。  生ける屍と化した、愉快なゾンビらと共に――。

彡(゚)(゚)あれ?ワイは確かにマリアナ沖で零戦と共に墜とされたはずやで・・・・・?(おーぷん2ちゃんねる過去収録のSS)

俊也
キャラ文芸
こちらは、私が2015年、おーぷん2ちゃんねるのなんでも実況J(おんJ) にて執筆、収録された、いわゆるSSの再録です。 当時身に余るご好評を頂いた、いわば架空戦記の処女作と申しますか。 2ちゃん系掲示板やなんJ、おんJの独特の雰囲気が色々ありましょうが、お楽しみ頂ければ幸いです。 お後、架空戦記系としては姉妹作「新訳 零戦戦記」 「総統戦記」も目をお通し頂ければ幸いです。 お時間なくば取り急ぎ「お気に入り登録」だけでも頂けましたらm(_ _)m

処理中です...