女子高生占い師の事件簿

凪子

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【2】リロケーション

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――それは先月行われた、名のある作詞家が集まって開かれるコンクールだった。

入賞すればコネもでき、デビューがしやすくなる。

律の作品は審査員から好評を博した。

あの詞には曲がつき、他の入賞作と一緒にインディーズとして発売される予定だ。

「そんな覚えはない。大体、お前、俺に詞を見せたことなんかないだろ」

「ほざいてんじゃねえ!お前のせいで俺はデビューを先越されたんだ!このパクリ野郎が!」

そういうことか。つまり、八つ当たりだ。律は唇を噛む。

いい奴だった。話せば気が合ったし、よくつるんで出かけていた。

比呂とストリートライブを始めてからは自然と疎遠になったが、友達だと思っていた。

少なくとも、こんな卑怯な真似をするやつではなかった。

背後にいる誰かがそそのかしたのか。律は、タコ殴りにしてくる連中を睨みつけた。

「謝れ。土下座して俺に詫びろ」

「亜子。お前、こいつに脅されてたんだな」

ここにおびき寄せられたのは、亜子ではなく自分だ。

どうしてツトムが亜子と自分のことを知っているのかは疑問だったが、この際どうでもいい。

こんなことに亜子を巻き込むわけにはいかない。今はただ、それだけだった。

「シカトこいてんじゃねえ!」

ツトムの手が滑り、亜子の柔らかな首筋を裂いて血が流れた。

そこで、堪忍袋の尾が盛大にぶち切れた。

「……ふざけるなよ」

頬を拭い、近くの一人を突き飛ばす。殴りかかってきた相手を身をかがめてかわし、足をかけて転ばせる。

「俺に文句あるんなら、直接俺に喧嘩売りやがれ!いつでも受けて立ってやる!!」

一人に膝蹴りを入れてなぎ倒し、律はダン、と音を立てて地面を蹴りつけた。

「それとも何か?お前、一人じゃ俺に勝てないって分かってて、こういう汚ねぇ真似をしてくれちゃったわけか」

亜子は戦慄した。ツトムがナイフを構えるのが分かったからだった。

律の挑発に乗り、ツトムは亜子を離して、律に襲いかかってきた。全力の殺意がこもった、無言の突進だった。

律の腕を、残っていた仲間たちが動けないように押さえ込む。このまま心臓を刺し貫かれれば、終わる。

「やめて!!!りっちゃん!!!!」

亜子が涙を流しながら絶叫するのが、目の端で捉えられた。この隙に逃げればいいのに、馬鹿なやつだ。

――泣くなよ、亜子。

ツトムを止めるために、律は渾身の力を込めて押さえてくる手を振り払おうとした。

だが、傷がうずいて体に力が入らない。

恵果の笑顔が脳裏をよぎって、律はざまあねえな、と笑った。
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