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【2】リロケーション
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大規模な港湾と、それに連なる工場街。
そこへ入る手前に、バブル時代の遺物とも呼べる廃ビルがいくつか並んでいる。
建てたはいいが、会社が倒産し、そのまま放置されてしまった廃墟だ。
いかにも吹きさらしといった、さびれた佇まいをあらわにしている、物言わぬビルの群れ。
そのうちの一つに、亜子は足を踏み入れようとした。
「おいおい、マジかよ」
廃ビルはホームレスや不良集団の格好のたまり場になっている。
迷い込んだ子供ならともかく、地元の住民は間違っても近寄ったりしない。
律は亜子の肩をつかんで引き止める。
だが、亜子はそれを思いがけない力で振り払った。
「ここで待っててください。お願いだから入ってこないで」
その表情には、恐怖を通り越して悲壮感すら漂っていた。
「何で」
「それは、私がここに呼ばれたのは、あなたを」
言いかけた亜子が、開いた扉から伸びてきた複数の腕に引っ張られて消えた。
野卑な笑い声がこだまする。律は驚いて扉を開けた。
「亜子!!」
亜子は悲鳴すらあげられないまま、引きずられるようにして階段を降りていく。
エレベーターはさすがに使えない。
やはり罠だったのだ。
律は一瞬、自分が最も信用しない公共機関――警察に通報しようかとさえ思った。だが、追うのが先だ。
建物の中は明かりが灯り、誰かが住んでいるかのような形跡があった。
床にはカップラーメンや空き缶などのゴミが散乱しており、そのどれもが新しい。
律は階段を一足飛びで駆け下り、防火扉のような小さなドアを蹴破るようにして開け放った。
そこへ入る手前に、バブル時代の遺物とも呼べる廃ビルがいくつか並んでいる。
建てたはいいが、会社が倒産し、そのまま放置されてしまった廃墟だ。
いかにも吹きさらしといった、さびれた佇まいをあらわにしている、物言わぬビルの群れ。
そのうちの一つに、亜子は足を踏み入れようとした。
「おいおい、マジかよ」
廃ビルはホームレスや不良集団の格好のたまり場になっている。
迷い込んだ子供ならともかく、地元の住民は間違っても近寄ったりしない。
律は亜子の肩をつかんで引き止める。
だが、亜子はそれを思いがけない力で振り払った。
「ここで待っててください。お願いだから入ってこないで」
その表情には、恐怖を通り越して悲壮感すら漂っていた。
「何で」
「それは、私がここに呼ばれたのは、あなたを」
言いかけた亜子が、開いた扉から伸びてきた複数の腕に引っ張られて消えた。
野卑な笑い声がこだまする。律は驚いて扉を開けた。
「亜子!!」
亜子は悲鳴すらあげられないまま、引きずられるようにして階段を降りていく。
エレベーターはさすがに使えない。
やはり罠だったのだ。
律は一瞬、自分が最も信用しない公共機関――警察に通報しようかとさえ思った。だが、追うのが先だ。
建物の中は明かりが灯り、誰かが住んでいるかのような形跡があった。
床にはカップラーメンや空き缶などのゴミが散乱しており、そのどれもが新しい。
律は階段を一足飛びで駆け下り、防火扉のような小さなドアを蹴破るようにして開け放った。
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