女子高生占い師の事件簿

凪子

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【2】リロケーション

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【2】リロケーション





「俺さー、何か最近、尾けられてる気がするんだよな」

いつもどおりストリートライブを終え、いつもどおり比呂のマンションに集まり、いつもどおり夜食を食べた後、律はいつもとは違って妙に真面目な顔で切り出した。

恵果はこらえきれずに吹き出した。

「へ?何て?び、尾行?りっちゃんが?はは、あはははは!!」

苦しそうに体をくの字に折って笑い転げる。

「笑うな!俺は真面目に言ってるんだよ!」

涙目の恵果を怒鳴りつけ、その左手をつねる。

「痛っ、痛い痛い!ごめんなさい、だって美蘭さんじゃあるまいし、何でりっちゃんが?
あ、分かった。【RITZ】のファンだ」

人差し指を立てる恵果に、律は呆れたようにため息をついた。

「お前は馬鹿か。そんな熱狂的なファンがいてたまるか」

そもそも【RITZ】のファンのほとんどは比呂のファンだ。

律はそんな空しい反論を胸の内に留めておくことにした。

「追っかけてみたら?律は走り速いだろ?」

それまで静観していた比呂が、ぽつりと言った。

律は比呂の方に向き直り、肩をすくめた。

「それがさー、何回かやってみたんだけど、ぱっと消えんの」

「へー……幽霊だったりして」

比呂は脅かすように声をひそめた。

「もういいよ。お前らに話した俺が馬鹿でした」

恵果はいつのまにやら冷凍庫から三つアイスを取り出して、テーブルに置いた。

クーラーのきいた部屋で楽しむ贅沢だ。

ちょこちょこと歩いてきて、律の隣に座り、見上げる。

「占ってみようか?本当に危険が迫ってるなら、何か分かるかもしれないし。一回千円ね」

手を広げて差し出した恵果に、律は嫌そうな顔をした。

「先輩から金取るのかよ」

比呂は恵果の占いの価値と、普段の定価を知っていたので、にこりと笑った。

律の肩をたたいて、自らの財布から千円札を取り出し、優雅な所作でテーブルの上に置く。

「占っといてもらいな」

「さっすが比呂。男前~!」

律は手を打ったが、比呂は当然こうつけ足すことを忘れなかった。

「利子はトイチだよ?」
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