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【1】ハーモニクス アストロジー
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絶句した美蘭に、渡瀬はさらに言い募った。
「あれー?おかしいなあ。今井さんから話は聞いてると思うんだけど」
美蘭は体中の血がざっと足に流れ落ちるのが分かった。
今井か。
あいつの持ってきた『仕事』はこれか。
今井はさまざまな言葉に粉飾していたけれど、聡い美蘭はすぐに気づいた。
これはNOを許さない仕事なのだろう。断れば、美蘭の首は今度こそ飛ぶ。とても簡単に。
数年前まで事務所の出世頭で、どんなワガママも許されてきた自分が。
「金ないんだろ?ね、頼むよ。美蘭ちゃん」
汚らわしい手を振り払い、美蘭は唇を噛み締めた。
体全体がわなわなと、こらえようのない怒りに打ち震えていた。
美蘭の刺し貫くような視線を受けて、渡瀬はせせら笑った。
「何怒ってんの?お高くとまっても無駄だよ。それとも、今さら清純派女優で売れると思ってるわけ?サバ読み姫が聞いて呆れるね」
美蘭はまず、親指を入れずに右手を握り締めた。
「女は脱げば金になるんだからさ、四の五の言わずに素直になれよ」
それから顎と肘を引き、しっかりと相手を見据える。
「もう事務所から承諾は取ってあるの。はい、いい子でちゅねー。かわいーく撮ってあげるから、おいで」
足を一歩踏みしめ、それから渾身の力を込めて、男の鼻めがけて拳を叩き込んだ。
骨にめり込む確かな手応えがあった。
「むぐっ……ふぐぅ……っ」
渡瀬が顔を仰向けてたたらを踏む。
鼻の穴から血がだらだら出ているを見て、思わず爆笑した。
「ははっ……あはははははは!!!!」
爽快だった。
「あれー?おかしいなあ。今井さんから話は聞いてると思うんだけど」
美蘭は体中の血がざっと足に流れ落ちるのが分かった。
今井か。
あいつの持ってきた『仕事』はこれか。
今井はさまざまな言葉に粉飾していたけれど、聡い美蘭はすぐに気づいた。
これはNOを許さない仕事なのだろう。断れば、美蘭の首は今度こそ飛ぶ。とても簡単に。
数年前まで事務所の出世頭で、どんなワガママも許されてきた自分が。
「金ないんだろ?ね、頼むよ。美蘭ちゃん」
汚らわしい手を振り払い、美蘭は唇を噛み締めた。
体全体がわなわなと、こらえようのない怒りに打ち震えていた。
美蘭の刺し貫くような視線を受けて、渡瀬はせせら笑った。
「何怒ってんの?お高くとまっても無駄だよ。それとも、今さら清純派女優で売れると思ってるわけ?サバ読み姫が聞いて呆れるね」
美蘭はまず、親指を入れずに右手を握り締めた。
「女は脱げば金になるんだからさ、四の五の言わずに素直になれよ」
それから顎と肘を引き、しっかりと相手を見据える。
「もう事務所から承諾は取ってあるの。はい、いい子でちゅねー。かわいーく撮ってあげるから、おいで」
足を一歩踏みしめ、それから渾身の力を込めて、男の鼻めがけて拳を叩き込んだ。
骨にめり込む確かな手応えがあった。
「むぐっ……ふぐぅ……っ」
渡瀬が顔を仰向けてたたらを踏む。
鼻の穴から血がだらだら出ているを見て、思わず爆笑した。
「ははっ……あはははははは!!!!」
爽快だった。
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