女子高生占い師の事件簿

凪子

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【1】ハーモニクス アストロジー

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「りっちゃん!」

「おう、恵果」

「珍しいね。りっちゃんが本屋に来るなんて」

エロ本?と真顔で聞かれ、律は恵果の頭を軽く小突いた。

「馬鹿、ちげぇよ。楽譜探してんの」

近くに音楽専門の店もあるのだが、この書店でも大概の楽譜なら置いてある。

品揃えは多く、店内地図があるほど広い。

静かになって、律がふと目をやると、恵果は隣で興味津々な様子で楽譜をぱらぱらめくっている。

「お前さ、聞きたかったんだけど、一人暮らしなわけ?」

「んん?違うよ。喫茶店で住み込みで働いてるの」

「住み込みで?」

「そ。叔母さんの喫茶店を手伝ってるの」

「ああ……そういうこと」

恵果は年齢的には高校一年生である。

にも関わらず、登校どころか入学すらしていないことを、律は知っていた。

律も恵果も市立第二中学の卒業生で、いわば先輩後輩の関係なのだが、学年が二つ離れているので接触の機会はなかった。

だが、後輩だという事実を知った今、律は何かと恵果の世話を焼こうとしては失敗している。

今どき中卒で働いて食べていけるのだろうかと心配していたのだが、叔母の家に厄介になっているのなら、少しは安心だ。

だが、誰の手も借りずに生きていく恵果を、たくましいと思う反面、危ういと感じるのも事実だった。




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