守護霊は吸血鬼❤

凪子

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気がついたら、聖は自分のベッドの上に横たわっていた。

一瞬、今何時で自分が何をしていたのか分からなくなる。

だが、すぐ隣にヴァンの姿をはっきり認めて、全ての記憶が一挙に蘇った。

「気がついたか」

ベッド脇にあるソファーに腰かけ、のうのうとヴァンはそう言った。聖はすぐさま枕を掴んで投げつけた。

「ふざけるな!」

顔を真っ赤にして肩で息を繰り返す。

「お前何なんだよ!消えたかと思ったらいきなり目の前に現れて、いいい加減にしろよ!出てけ!出てけよ!!」 

「何言ってるんだ。この間は俺に血を吸ってくれとせがんでおいて」

しゃあしゃあと涼しく微笑むヴァンに、聖は殺意を覚えた。

「黙れ!俺はもう、お前に血は吸わせないって決めたんだ」 

「それは無理な相談だな。お前自身分かっているはずだ」

あまりにきっぱりと断言され、怒りの炎に油が注がれた。

「栞さんは思うようにできても、俺は違う。お前のために自分の命をくれてやったりなんてしない。そんなのまっぴらだ。俺はお前なんか大嫌いだ!」

ヴァンは目を瞬かせてそれを聞いていたかと思うと、笑い出した。

「俺がお前の命を奪う?まだ寝ぼけているのか?世迷言もほどほどにしておけよ」

子供をあやすような口調で言われて、聖はさらにいきり立った。

「もうお前には騙されないぞ!全部遥さんから聞いたんだ!お前は俺を利用して、俺の血から生命力を吸い上げて復活しようとしてるんだろう!同じようにして、栞さんのことも殺したんだろう!この、人殺し!」

激昂する聖をよそに、ヴァンは少しく何かを考え込むような表情になった。

聖は興奮冷めやらない様子でヴァンを罵った。息切れしながら、

「俺は栞さんとは違う。俺は俺なんだ!絶対、お前の好き勝手にはさせない」

ヴァンは何を自明のことを、と言わんばかりの顔でさらりと切り捨てた。

「当たり前だ。お前が栞と同じなはずないだろう。何を言ってるんだ?お前は」

「なっ……」

思わず二の句が継げなくなった聖の両手を掴んで押し倒すと、ヴァンは婉然と笑った。

「言いたいことはそれだけか?なら続きをさせてもらう」

「続きって」

「お前ばかり楽しまれたんじゃつまらない。久しぶりの再会なんだ、もっと俺を楽しませろよ」

まったく懲りない様子のヴァンに、聖は激怒した。

「血はやらないって言っただろ!お前の復活に力なんて貸すもんか!」

自分の命を蝕む口づけを恐れて、聖は捌かれる前の獣のように半狂乱になって暴れた。

そのあまりに必死な抵抗ぶりに、ヴァンは目を細める。

「聖、お前……何か吹き込まれたな?」

聖がひゅっと喉の奥まで息を呑む。ヴァンが険しい表情で何事か言いかけたそのとき、

「解!」

空を切り裂くような声がどこからか響き渡り、ジェットコースターに乗った時のように世界がぐるんと反転し、気がついたら聖とヴァンは聖の自室とは似ても似つかない場所へ飛ばされていた。
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