81 / 87
80
しおりを挟む
気がついたら、聖は自分のベッドの上に横たわっていた。
一瞬、今何時で自分が何をしていたのか分からなくなる。
だが、すぐ隣にヴァンの姿をはっきり認めて、全ての記憶が一挙に蘇った。
「気がついたか」
ベッド脇にあるソファーに腰かけ、のうのうとヴァンはそう言った。聖はすぐさま枕を掴んで投げつけた。
「ふざけるな!」
顔を真っ赤にして肩で息を繰り返す。
「お前何なんだよ!消えたかと思ったらいきなり目の前に現れて、いいい加減にしろよ!出てけ!出てけよ!!」
「何言ってるんだ。この間は俺に血を吸ってくれとせがんでおいて」
しゃあしゃあと涼しく微笑むヴァンに、聖は殺意を覚えた。
「黙れ!俺はもう、お前に血は吸わせないって決めたんだ」
「それは無理な相談だな。お前自身分かっているはずだ」
あまりにきっぱりと断言され、怒りの炎に油が注がれた。
「栞さんは思うようにできても、俺は違う。お前のために自分の命をくれてやったりなんてしない。そんなのまっぴらだ。俺はお前なんか大嫌いだ!」
ヴァンは目を瞬かせてそれを聞いていたかと思うと、笑い出した。
「俺がお前の命を奪う?まだ寝ぼけているのか?世迷言もほどほどにしておけよ」
子供をあやすような口調で言われて、聖はさらにいきり立った。
「もうお前には騙されないぞ!全部遥さんから聞いたんだ!お前は俺を利用して、俺の血から生命力を吸い上げて復活しようとしてるんだろう!同じようにして、栞さんのことも殺したんだろう!この、人殺し!」
激昂する聖をよそに、ヴァンは少しく何かを考え込むような表情になった。
聖は興奮冷めやらない様子でヴァンを罵った。息切れしながら、
「俺は栞さんとは違う。俺は俺なんだ!絶対、お前の好き勝手にはさせない」
ヴァンは何を自明のことを、と言わんばかりの顔でさらりと切り捨てた。
「当たり前だ。お前が栞と同じなはずないだろう。何を言ってるんだ?お前は」
「なっ……」
思わず二の句が継げなくなった聖の両手を掴んで押し倒すと、ヴァンは婉然と笑った。
「言いたいことはそれだけか?なら続きをさせてもらう」
「続きって」
「お前ばかり楽しまれたんじゃつまらない。久しぶりの再会なんだ、もっと俺を楽しませろよ」
まったく懲りない様子のヴァンに、聖は激怒した。
「血はやらないって言っただろ!お前の復活に力なんて貸すもんか!」
自分の命を蝕む口づけを恐れて、聖は捌かれる前の獣のように半狂乱になって暴れた。
そのあまりに必死な抵抗ぶりに、ヴァンは目を細める。
「聖、お前……何か吹き込まれたな?」
聖がひゅっと喉の奥まで息を呑む。ヴァンが険しい表情で何事か言いかけたそのとき、
「解!」
空を切り裂くような声がどこからか響き渡り、ジェットコースターに乗った時のように世界がぐるんと反転し、気がついたら聖とヴァンは聖の自室とは似ても似つかない場所へ飛ばされていた。
一瞬、今何時で自分が何をしていたのか分からなくなる。
だが、すぐ隣にヴァンの姿をはっきり認めて、全ての記憶が一挙に蘇った。
「気がついたか」
ベッド脇にあるソファーに腰かけ、のうのうとヴァンはそう言った。聖はすぐさま枕を掴んで投げつけた。
「ふざけるな!」
顔を真っ赤にして肩で息を繰り返す。
「お前何なんだよ!消えたかと思ったらいきなり目の前に現れて、いいい加減にしろよ!出てけ!出てけよ!!」
「何言ってるんだ。この間は俺に血を吸ってくれとせがんでおいて」
しゃあしゃあと涼しく微笑むヴァンに、聖は殺意を覚えた。
「黙れ!俺はもう、お前に血は吸わせないって決めたんだ」
「それは無理な相談だな。お前自身分かっているはずだ」
あまりにきっぱりと断言され、怒りの炎に油が注がれた。
「栞さんは思うようにできても、俺は違う。お前のために自分の命をくれてやったりなんてしない。そんなのまっぴらだ。俺はお前なんか大嫌いだ!」
ヴァンは目を瞬かせてそれを聞いていたかと思うと、笑い出した。
「俺がお前の命を奪う?まだ寝ぼけているのか?世迷言もほどほどにしておけよ」
子供をあやすような口調で言われて、聖はさらにいきり立った。
「もうお前には騙されないぞ!全部遥さんから聞いたんだ!お前は俺を利用して、俺の血から生命力を吸い上げて復活しようとしてるんだろう!同じようにして、栞さんのことも殺したんだろう!この、人殺し!」
激昂する聖をよそに、ヴァンは少しく何かを考え込むような表情になった。
聖は興奮冷めやらない様子でヴァンを罵った。息切れしながら、
「俺は栞さんとは違う。俺は俺なんだ!絶対、お前の好き勝手にはさせない」
ヴァンは何を自明のことを、と言わんばかりの顔でさらりと切り捨てた。
「当たり前だ。お前が栞と同じなはずないだろう。何を言ってるんだ?お前は」
「なっ……」
思わず二の句が継げなくなった聖の両手を掴んで押し倒すと、ヴァンは婉然と笑った。
「言いたいことはそれだけか?なら続きをさせてもらう」
「続きって」
「お前ばかり楽しまれたんじゃつまらない。久しぶりの再会なんだ、もっと俺を楽しませろよ」
まったく懲りない様子のヴァンに、聖は激怒した。
「血はやらないって言っただろ!お前の復活に力なんて貸すもんか!」
自分の命を蝕む口づけを恐れて、聖は捌かれる前の獣のように半狂乱になって暴れた。
そのあまりに必死な抵抗ぶりに、ヴァンは目を細める。
「聖、お前……何か吹き込まれたな?」
聖がひゅっと喉の奥まで息を呑む。ヴァンが険しい表情で何事か言いかけたそのとき、
「解!」
空を切り裂くような声がどこからか響き渡り、ジェットコースターに乗った時のように世界がぐるんと反転し、気がついたら聖とヴァンは聖の自室とは似ても似つかない場所へ飛ばされていた。
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説

王様のナミダ
白雨あめ
BL
全寮制男子高校、箱夢学園。 そこで風紀副委員長を努める桜庭篠は、ある夜久しぶりの夢をみた。
端正に整った顔を歪め、大粒の涙を流す綺麗な男。俺様生徒会長が泣いていたのだ。
驚くまもなく、学園に転入してくる王道転校生。彼のはた迷惑な行動から、俺様会長と風紀副委員長の距離は近づいていく。
※会長受けです。
駄文でも大丈夫と言ってくれる方、楽しんでいただけたら嬉しいです。
いとしの生徒会長さま
もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……!
しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!

なんか金髪超絶美形の御曹司を抱くことになったんだが
なずとず
BL
タイトル通りの軽いノリの話です
酔った勢いで知らないハーフと将来を約束してしまった勇気君視点のお話になります
攻
井之上 勇気
まだまだ若手のサラリーマン
元ヤンの過去を隠しているが、酒が入ると本性が出てしまうらしい
でも翌朝には完全に記憶がない
受
牧野・ハロルド・エリス
天才・イケメン・天然ボケなカタコトハーフの御曹司
金髪ロング、勇気より背が高い
勇気にベタ惚れの仔犬ちゃん
ユウキにオヨメサンにしてもらいたい
同作者作品の「一夜の関係」の登場人物も絡んできます
[BL]デキソコナイ
明日葉 ゆゐ
BL
特別進学クラスの優等生の喫煙現場に遭遇してしまった校内一の問題児。見ていない振りをして立ち去ろうとするが、なぜか優等生に怪我を負わされ、手当てのために家に連れて行かれることに。決して交わることのなかった2人の不思議な関係が始まる。(別サイトに投稿していた作品になります)
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

周りが幼馴染をヤンデレという(どこが?)
ヨミ
BL
幼馴染 隙杉 天利 (すきすぎ あまり)はヤンデレだが主人公 花畑 水華(はなばた すいか)は全く気づかない所か溺愛されていることにも気付かずに
ただ友達だとしか思われていないと思い込んで悩んでいる超天然鈍感男子
天利に恋愛として好きになって欲しいと頑張るが全然効いていないと思っている。
可愛い(綺麗?)系男子でモテるが天利が男女問わず牽制してるためモテない所か自分が普通以下の顔だと思っている
天利は時折アピールする水華に対して好きすぎて理性の糸が切れそうになるが、なんとか保ち普段から好きすぎで悶え苦しんでいる。
水華はアピールしてるつもりでも普段の天然の部分でそれ以上のことをしているので何しても天然故の行動だと思われてる。
イケメンで物凄くモテるが水華に初めては全て捧げると内心勝手に誓っているが水華としかやりたいと思わないので、どんなに迫られようと見向きもしない、少し女嫌いで女子や興味、どうでもいい人物に対してはすごく冷たい、水華命の水華LOVEで水華のお願いなら何でも叶えようとする
好きになって貰えるよう努力すると同時に好き好きアピールしているが気づかれず何年も続けている内に気づくとヤンデレとかしていた
自分でもヤンデレだと気づいているが治すつもりは微塵も無い
そんな2人の両片思い、もう付き合ってんじゃないのと思うような、じれ焦れイチャラブな恋物語
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる