守護霊は吸血鬼❤

凪子

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「悪いが、邪魔はさせないよ。君を奴から解放するのが僕の役目だからね」

そう言われて、聖ははっと気づいた。

結界がガラスの障壁のように硬度を増し、いまや完全に聖を閉じ込めていた。

拳で叩いても、鈍く跳ね返ってくる。かなりの強度があることが窺われた。

自分が堅固な牢獄の中にいると自覚したとき、聖は稲妻に打たれたようにして理解した。

(これは俺を守るための結界じゃない。俺に、ヴァンを殺す邪魔をさせないための檻だったんだ)

きっと遥は、最初からこの事態を予想していたに違いない。

土壇場にきて意思を翻し、聖が止めに入るという事態を。

全ては計算ずくだったのだ。

「待ってください、月代さん!」

聖は無駄と分かりつつ結界の壁をたたき、叫んだ。

「俺、やっぱりできません!ヴァンのことを殺すのは待ってください」

「そう言うと思ったよ。優しいね、君は」

遥は生徒を見守る教師のような、寛容で慈悲深い微笑を投げかける。

それでも、手にしている錫杖には揺るぎない力がこもってゆく。

「あああ……!ぐっ……」

ヴァンの悲痛な叫び声が途切れ途切れに聞こえてくる。

聖に背を向け、ヴァンを見下ろすと、遥は光る刃のような横顔で言った。

「聖君が手を下す必要はないよ。僕が今、全てを終わらせてあげる。何も心配せずに見ておいで」

抗うように口を開きかけた聖を制して、遥は深遠を見つめる目で告げる。

「可哀想だと思うのなら、最後の言葉をかけてやればいい。こいつにそんな言葉を贈る価値などないと思うけれどね」

辛辣な台詞に、ヴァンが目を尖らせる。だがもはや、身体に溜め込んだ力を根こそぎ奪われてしまったようだった。

聖は結界を解こうとして、がむしゃらにかきわけるようにして爪を立てて引っかいたが、結界はびくともせず、屈強に立ちはだかっている。

もどかしくてじれったくて、わけもなく泣きそうになりながら、聖は叫び声をあげた。

「ヴァン!!」

ヴァンの瞳がこちらを見た。

その瞳は凄まじく強い力で聖の奥底を真っすぐに貫き、何かを雄弁に伝えていた。

言葉は泉のように溢れて、涙のようにこぼれ落ちてきた。

「お前……っ、お前はこんなんで消えちゃうのかよ!!あんなに余裕綽々だったくせに!俺のこと特別だって、一生血を吸うって言ってたくせに!俺の前でそんなカッコ悪い姿見せんなよ!!」

(何言ってるんだ、俺)

口走ってから聖はうろたえた。

遥の瞳が糸のように細くなる。
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