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「そんなに俺のことが信じられないか。
いいか聖、俺の言うことは何があろうと絶対だ。俺が血を吸うと言えば必ず吸うし、殺すと言えば絶対に殺すんだ」
あまりの迫力に、聖はごくりと唾を飲んだ。
気迫や実力は拮抗しているように見える。だが、ヴァンは冷血で容赦のない吸血鬼だ。
そんな奴が本気で殺しにかかったら、いくら有能な除霊師でも命が危ないのではないか。
(どうしよう。俺がこいつを連れてきたせいで、月代さんが)
そのときガキンと鈍い音がして、遥の手から錫杖が弾き飛ばされた。
「月代さん!」
思わず痛む手を押さえてバランスを崩しかけた月代を捕らえ、ヴァンは床に突き倒して喉元に剣先を突きつけた。
遥の首筋に小さな血の玉が浮かぶ。
「どうした、もうおしまいか?お前も所詮、口先だけのつまらぬ下等な輩だったということか。月代の一族も堕ちたものだな」
あおむけになったまま身動きが取れない遥は、最後の抵抗を目論んでか、袖口から針のようなものを投げつける。
針の動きを止まっているかのごとく捉えてひょいとかわすと、ヴァンは勝ち誇った笑みを浮かべた。
遥はヴァンの剣身を握り締め、強い力で押し返す。手のひらから血が滲んで赤い糸のように滴った。
「まだ終わりじゃないさ」
「ほう?」
ヴァンは愉快そうに笑うと、難なく遥の手を払って剣を振りかぶった。
「君は勝手すぎる。自分の利益しか考えず、他者をどれだけ傷つけようが苦しませようが一向に省みない。
……聖君の気持ちを考えたことがあるのか」
突如として名前を挙げられ、聖はびっくりした。
遥はまるで、何もかもの事情を承知しているかのような言い草だったので。
ヴァンは片頬を歪めるようにして笑う。それから遥の肩を長い足で思いきり踏みつけた。
「ぐあっ!」
遥がうめき声を上げる。苦痛を滲ませた表情に、聖は心の底から恐れおののいた。
「やめろ!やめろよ、ヴァン!!」
ヴァンは聖の制止をまるきり無視してこう言った。
「貴様に説教されるいわれはない。賢しらぶってくだらん戯言を言い並べるときのその不愉快な面、月代彼方に瓜二つだ。まったく吐き気がするほどよく似ているぞ。血は争えないとはこういうことだな」
一言一言明確に発声しながらも、ヴァンは足の力を全く緩めず執拗に踏みにじる。
肉が潰れるようないとわしい音に、聖は凍りついたまま棒立ちになる。
「聖の気持ちを考えたことがあるかだと?笑わせるな。俺はこいつを二百年も待ち続けていたんだぞ。たかだか除霊師の末裔ごときに推し量れるものではない。聖は俺のものだ。それを邪魔立てするというのなら、お前を殺すまでだ」
「違うな。君は怯えているんだ。二百年前、僕の先祖様が君を封印したときのように、また永遠の孤独の闇へと還ることが恐ろしいんだ。それどころか、今度は霊体ごと消滅してしまうかもしれない。だからわざわざ僕の元へやってきたんだ、不安要素を消すために。そうでなければ、不安で怖くて、いてもたってもいられないんだ」
「何だと?」
ヴァンのこめかみが引きつった。
いいか聖、俺の言うことは何があろうと絶対だ。俺が血を吸うと言えば必ず吸うし、殺すと言えば絶対に殺すんだ」
あまりの迫力に、聖はごくりと唾を飲んだ。
気迫や実力は拮抗しているように見える。だが、ヴァンは冷血で容赦のない吸血鬼だ。
そんな奴が本気で殺しにかかったら、いくら有能な除霊師でも命が危ないのではないか。
(どうしよう。俺がこいつを連れてきたせいで、月代さんが)
そのときガキンと鈍い音がして、遥の手から錫杖が弾き飛ばされた。
「月代さん!」
思わず痛む手を押さえてバランスを崩しかけた月代を捕らえ、ヴァンは床に突き倒して喉元に剣先を突きつけた。
遥の首筋に小さな血の玉が浮かぶ。
「どうした、もうおしまいか?お前も所詮、口先だけのつまらぬ下等な輩だったということか。月代の一族も堕ちたものだな」
あおむけになったまま身動きが取れない遥は、最後の抵抗を目論んでか、袖口から針のようなものを投げつける。
針の動きを止まっているかのごとく捉えてひょいとかわすと、ヴァンは勝ち誇った笑みを浮かべた。
遥はヴァンの剣身を握り締め、強い力で押し返す。手のひらから血が滲んで赤い糸のように滴った。
「まだ終わりじゃないさ」
「ほう?」
ヴァンは愉快そうに笑うと、難なく遥の手を払って剣を振りかぶった。
「君は勝手すぎる。自分の利益しか考えず、他者をどれだけ傷つけようが苦しませようが一向に省みない。
……聖君の気持ちを考えたことがあるのか」
突如として名前を挙げられ、聖はびっくりした。
遥はまるで、何もかもの事情を承知しているかのような言い草だったので。
ヴァンは片頬を歪めるようにして笑う。それから遥の肩を長い足で思いきり踏みつけた。
「ぐあっ!」
遥がうめき声を上げる。苦痛を滲ませた表情に、聖は心の底から恐れおののいた。
「やめろ!やめろよ、ヴァン!!」
ヴァンは聖の制止をまるきり無視してこう言った。
「貴様に説教されるいわれはない。賢しらぶってくだらん戯言を言い並べるときのその不愉快な面、月代彼方に瓜二つだ。まったく吐き気がするほどよく似ているぞ。血は争えないとはこういうことだな」
一言一言明確に発声しながらも、ヴァンは足の力を全く緩めず執拗に踏みにじる。
肉が潰れるようないとわしい音に、聖は凍りついたまま棒立ちになる。
「聖の気持ちを考えたことがあるかだと?笑わせるな。俺はこいつを二百年も待ち続けていたんだぞ。たかだか除霊師の末裔ごときに推し量れるものではない。聖は俺のものだ。それを邪魔立てするというのなら、お前を殺すまでだ」
「違うな。君は怯えているんだ。二百年前、僕の先祖様が君を封印したときのように、また永遠の孤独の闇へと還ることが恐ろしいんだ。それどころか、今度は霊体ごと消滅してしまうかもしれない。だからわざわざ僕の元へやってきたんだ、不安要素を消すために。そうでなければ、不安で怖くて、いてもたってもいられないんだ」
「何だと?」
ヴァンのこめかみが引きつった。
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