47 / 87
46
しおりを挟む
「なるほどな」
今まで黙っていたヴァンが、納得したように言って、聖の足を見つめた。
「お前は守られてばかりのお姫様かと思っていたら、どうやら違ったらしい」
(いや、違わないよ)
聖の陰鬱な自嘲に、ヴァンは軽く眉を上げた。
(試合のときは、無意識だったから動けたんだ。その後どんなことになるかなんて、考える暇もなかった。
だけど、さっきは……さっきのが俺の本当なんだ。俺は臆病で無力だ。自力で由宇を助けたいと思ったのに、足がすくんで動けなかった)
ヴァンはふんと鼻を鳴らす。
「臆病。結構じゃないか。だいたい、そんなつまらないことで怪我をされては困る。お前の血が飲めなくなるだろうが」
このうえなく甘美な血の味をかみ締めるようにして、ヴァンは桃色の舌をちろりと覗かせる。
聖は屈辱が脳裏に鮮烈によみがえって、ぱっと目を逸らした。
(つまらないって何だよ!由宇は俺の親友だぞ!)
「向こうはそうは思っていないようだがな」
と、涼しい顔でさらりとヴァンは言い刺した。
(え?)
思考が停止し固まった聖の前で、由宇は申し訳なさそうに言った。
「聖。それで、悪いんだけど今日は俺、ついて行けそうにないんだ。親も来るだろうし、医者にも安静にしておけって言われちまったし」
「あ、ああ。大丈夫、分かってるよ」
由宇はヴァンのほうをじっと睨んでいたかと思うと、鞄から取り出した手帳にさらさらと地図と電話番号を書いて聖に手渡した。
「この場所にある神社に行けばいい。そうしたら祓ってもらえるよ。遥さんには、俺から事情を説明しておくからさ」
聖は思わずヴァンを見た。ヴァンは平然と落ち着き払っている。
「それはありがたいけど。一人で行ってもいいのか?俺、何もわかってないけど」
「大丈夫だよ。とにかく行ってくれ。あの人に任せておけば絶対大丈夫だから」
真剣な眼差しで念押しする由宇に気圧されて、
「分かった」
聖は思わず頷き返すのだった。
今まで黙っていたヴァンが、納得したように言って、聖の足を見つめた。
「お前は守られてばかりのお姫様かと思っていたら、どうやら違ったらしい」
(いや、違わないよ)
聖の陰鬱な自嘲に、ヴァンは軽く眉を上げた。
(試合のときは、無意識だったから動けたんだ。その後どんなことになるかなんて、考える暇もなかった。
だけど、さっきは……さっきのが俺の本当なんだ。俺は臆病で無力だ。自力で由宇を助けたいと思ったのに、足がすくんで動けなかった)
ヴァンはふんと鼻を鳴らす。
「臆病。結構じゃないか。だいたい、そんなつまらないことで怪我をされては困る。お前の血が飲めなくなるだろうが」
このうえなく甘美な血の味をかみ締めるようにして、ヴァンは桃色の舌をちろりと覗かせる。
聖は屈辱が脳裏に鮮烈によみがえって、ぱっと目を逸らした。
(つまらないって何だよ!由宇は俺の親友だぞ!)
「向こうはそうは思っていないようだがな」
と、涼しい顔でさらりとヴァンは言い刺した。
(え?)
思考が停止し固まった聖の前で、由宇は申し訳なさそうに言った。
「聖。それで、悪いんだけど今日は俺、ついて行けそうにないんだ。親も来るだろうし、医者にも安静にしておけって言われちまったし」
「あ、ああ。大丈夫、分かってるよ」
由宇はヴァンのほうをじっと睨んでいたかと思うと、鞄から取り出した手帳にさらさらと地図と電話番号を書いて聖に手渡した。
「この場所にある神社に行けばいい。そうしたら祓ってもらえるよ。遥さんには、俺から事情を説明しておくからさ」
聖は思わずヴァンを見た。ヴァンは平然と落ち着き払っている。
「それはありがたいけど。一人で行ってもいいのか?俺、何もわかってないけど」
「大丈夫だよ。とにかく行ってくれ。あの人に任せておけば絶対大丈夫だから」
真剣な眼差しで念押しする由宇に気圧されて、
「分かった」
聖は思わず頷き返すのだった。
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説

王様のナミダ
白雨あめ
BL
全寮制男子高校、箱夢学園。 そこで風紀副委員長を努める桜庭篠は、ある夜久しぶりの夢をみた。
端正に整った顔を歪め、大粒の涙を流す綺麗な男。俺様生徒会長が泣いていたのだ。
驚くまもなく、学園に転入してくる王道転校生。彼のはた迷惑な行動から、俺様会長と風紀副委員長の距離は近づいていく。
※会長受けです。
駄文でも大丈夫と言ってくれる方、楽しんでいただけたら嬉しいです。
いとしの生徒会長さま
もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……!
しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!

なんか金髪超絶美形の御曹司を抱くことになったんだが
なずとず
BL
タイトル通りの軽いノリの話です
酔った勢いで知らないハーフと将来を約束してしまった勇気君視点のお話になります
攻
井之上 勇気
まだまだ若手のサラリーマン
元ヤンの過去を隠しているが、酒が入ると本性が出てしまうらしい
でも翌朝には完全に記憶がない
受
牧野・ハロルド・エリス
天才・イケメン・天然ボケなカタコトハーフの御曹司
金髪ロング、勇気より背が高い
勇気にベタ惚れの仔犬ちゃん
ユウキにオヨメサンにしてもらいたい
同作者作品の「一夜の関係」の登場人物も絡んできます
[BL]デキソコナイ
明日葉 ゆゐ
BL
特別進学クラスの優等生の喫煙現場に遭遇してしまった校内一の問題児。見ていない振りをして立ち去ろうとするが、なぜか優等生に怪我を負わされ、手当てのために家に連れて行かれることに。決して交わることのなかった2人の不思議な関係が始まる。(別サイトに投稿していた作品になります)
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

周りが幼馴染をヤンデレという(どこが?)
ヨミ
BL
幼馴染 隙杉 天利 (すきすぎ あまり)はヤンデレだが主人公 花畑 水華(はなばた すいか)は全く気づかない所か溺愛されていることにも気付かずに
ただ友達だとしか思われていないと思い込んで悩んでいる超天然鈍感男子
天利に恋愛として好きになって欲しいと頑張るが全然効いていないと思っている。
可愛い(綺麗?)系男子でモテるが天利が男女問わず牽制してるためモテない所か自分が普通以下の顔だと思っている
天利は時折アピールする水華に対して好きすぎて理性の糸が切れそうになるが、なんとか保ち普段から好きすぎで悶え苦しんでいる。
水華はアピールしてるつもりでも普段の天然の部分でそれ以上のことをしているので何しても天然故の行動だと思われてる。
イケメンで物凄くモテるが水華に初めては全て捧げると内心勝手に誓っているが水華としかやりたいと思わないので、どんなに迫られようと見向きもしない、少し女嫌いで女子や興味、どうでもいい人物に対してはすごく冷たい、水華命の水華LOVEで水華のお願いなら何でも叶えようとする
好きになって貰えるよう努力すると同時に好き好きアピールしているが気づかれず何年も続けている内に気づくとヤンデレとかしていた
自分でもヤンデレだと気づいているが治すつもりは微塵も無い
そんな2人の両片思い、もう付き合ってんじゃないのと思うような、じれ焦れイチャラブな恋物語
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる