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駅前の広場についた聖は、時計台の時刻が十五時二十分を指していることを確認した。
約束の時間の十分前だ。ほっと胸をなでおろす。
休日の街には、明るくまぶしい直射日光が無数の矢のように突き刺さっていて、行きかう人々は目を細めながら汗を拭っている。
雑踏のざわめきや呼吸や足音の中に注意深く身を潜めるようにして、聖は浅い呼吸を繰り返した。
(除霊師ってどういう人なんだろう。そんな職業聞いたことないしな。それに由宇のやつ、何でそんな特殊な世界の人なんかとつながりがあるんだろう)
疑問は泡のように生まれては膨らみ、胸の中で音を立てて弾ける。
決して答えの得られない謎が、そうやっていくつも宙に漂っている。
『除霊師に会わせる』と半ば強引に約束を取りつけた由宇は、聖がそのことについて何を聞いても、要領を得ない返事をするばかりだった。
そのくせ、『絶対に来い』と何度も念を押した。
『行けば分かる、行ったときに説明する』――と。
質問に答えるのを嫌がって、後回しにしようとはぐらかしているのは明らかだった。
それが聖の心に一抹の疑念を抱かせる。
由宇が自分のためを思って言ってくれていることなのだから、そこに悪い意図があるとは思わないが……もし由宇本人も、その除霊師とやらに騙されているのだとしたら、みすみすこちらから罠にはまるようなものだ。
(あいつが何の説明もしないから、金だって全然持ってきてないし。本当に大丈夫なのか?)
一人、また一人と片割れ同士が手を振り合って歩み寄るのを見送っていると、不安がひたひたと忍びやかに近づいてくる。
時計台の鐘が午後四時を知らせる。
待ち合わせの時刻から三十分も経ったのに、由宇は一向に現れる気配がなかった。
(おかしいな)
由宇は時間をきっちり守る人間だ。
よしんば何かのっぴきならない事由で遅れるにしても、電話やメールで相手に謝るくらいの気遣いはするだろう。
慌てて走っている最中なのか、大幅な寝坊でもしたのか。それとも、それさえもできないほどの状態なのか。
(待ち合わせ場所、合ってるよな?)
きょろきょろと周りを不安げに見渡す聖に、ヴァンが言った。
「そんなもの覚えちゃいない」
(お前に言ったんじゃねえよ!すっこんでろ)
「いいのか?そんな口をきいて」
ヴァンはお決まりの極悪な微笑を浮かべ、全てを見透かすような瞳で言った。
この男の思わせぶりで意味深な発言は挨拶のようなものだ、取り合うだけ無駄だ。
そう思って聖は無視を決め込む。
だが、次の瞬間、耳に飛び込んできたのは予想外の台詞だった。
「お前の従者は今、路地裏で袋だたきにあっているぞ。どうやら喧嘩のようだな」
「なっ……!」
思わず人目も気にせず、ヴァンのいるほうを凝視する。
ヴァンの後ろに立っていた女性が、突然まじまじと見つめられて居心地悪そうに身じろぎをした。
約束の時間の十分前だ。ほっと胸をなでおろす。
休日の街には、明るくまぶしい直射日光が無数の矢のように突き刺さっていて、行きかう人々は目を細めながら汗を拭っている。
雑踏のざわめきや呼吸や足音の中に注意深く身を潜めるようにして、聖は浅い呼吸を繰り返した。
(除霊師ってどういう人なんだろう。そんな職業聞いたことないしな。それに由宇のやつ、何でそんな特殊な世界の人なんかとつながりがあるんだろう)
疑問は泡のように生まれては膨らみ、胸の中で音を立てて弾ける。
決して答えの得られない謎が、そうやっていくつも宙に漂っている。
『除霊師に会わせる』と半ば強引に約束を取りつけた由宇は、聖がそのことについて何を聞いても、要領を得ない返事をするばかりだった。
そのくせ、『絶対に来い』と何度も念を押した。
『行けば分かる、行ったときに説明する』――と。
質問に答えるのを嫌がって、後回しにしようとはぐらかしているのは明らかだった。
それが聖の心に一抹の疑念を抱かせる。
由宇が自分のためを思って言ってくれていることなのだから、そこに悪い意図があるとは思わないが……もし由宇本人も、その除霊師とやらに騙されているのだとしたら、みすみすこちらから罠にはまるようなものだ。
(あいつが何の説明もしないから、金だって全然持ってきてないし。本当に大丈夫なのか?)
一人、また一人と片割れ同士が手を振り合って歩み寄るのを見送っていると、不安がひたひたと忍びやかに近づいてくる。
時計台の鐘が午後四時を知らせる。
待ち合わせの時刻から三十分も経ったのに、由宇は一向に現れる気配がなかった。
(おかしいな)
由宇は時間をきっちり守る人間だ。
よしんば何かのっぴきならない事由で遅れるにしても、電話やメールで相手に謝るくらいの気遣いはするだろう。
慌てて走っている最中なのか、大幅な寝坊でもしたのか。それとも、それさえもできないほどの状態なのか。
(待ち合わせ場所、合ってるよな?)
きょろきょろと周りを不安げに見渡す聖に、ヴァンが言った。
「そんなもの覚えちゃいない」
(お前に言ったんじゃねえよ!すっこんでろ)
「いいのか?そんな口をきいて」
ヴァンはお決まりの極悪な微笑を浮かべ、全てを見透かすような瞳で言った。
この男の思わせぶりで意味深な発言は挨拶のようなものだ、取り合うだけ無駄だ。
そう思って聖は無視を決め込む。
だが、次の瞬間、耳に飛び込んできたのは予想外の台詞だった。
「お前の従者は今、路地裏で袋だたきにあっているぞ。どうやら喧嘩のようだな」
「なっ……!」
思わず人目も気にせず、ヴァンのいるほうを凝視する。
ヴァンの後ろに立っていた女性が、突然まじまじと見つめられて居心地悪そうに身じろぎをした。
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