守護霊は吸血鬼❤

凪子

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耳障りな電子音が浅い眠りをさらう。

その音は初めは遠慮がちに、やがてしつこく間断なく響いては意識に手を伸ばし、揺さぶりをかけてきた。

鳴っているのが玄関のチャイム音だと気づき、聖はのろのろと鉛のように重い体を起こした。

「何だこの音は。騒がしいな」

隣で自称吸血鬼がそう呟くのが聞こえたが、聖は聞こえないふりを貫いた。

こいつの存在を認めてしまったら、自分が変になってしまうような気がした。

聖は投げやりな態度で確認もせず玄関を開けた。

「おっす。おはよ……ええ!?お前何だよその格好。寝坊か?」

やってきたのは制服姿の由宇で、パジャマ姿で髪も乱れている聖に仰天した。

「ていうか、今何時?」

「八時すぎだよ。あと三十分で学校始まるぞ?」

「ああ、そう……それはどうも」

まだとろんとした目で寝ぼけたようなことを言っている聖に、由宇は目を細めた。

「顔色悪いな。風邪でもひいたのか?」

「別に」

「何言ってんだよ、真っ青な顔して。熱は?測ったのか?」

そう言って額に伸ばしてきた由宇の手を、ヴァンは乱暴に払いのけた。

「俺の許可なくこいつに触るな」

「!!」

突然弾かれた手に、由宇はぎょっとしたような顔で硬直する。

一瞬、二人の間を流れる空気が止まった。

(何するんだよ!)

聖が心の中で猛反発すると、

「何だ?『こいつ』では不満か?ならば愛玩人形か所有物だな。どれでも好きなものを選ばせてやるぞ」

(何で……!!)

なんとヴァンは心の声を的確に読み、答えたではないか。

聖は頭が真っ白になるほどの動転のあまり、思わず由宇へのフォローを忘れた。

「今、何かいなかったか?」

由宇は眉を寄せて聖の背後、ちょうどヴァンがいるあたりを睨みつけている。

聖は一瞬全てをぶちまけて助けを求めようとする衝動に駆られたが、先ほどの手痛い失敗を思い出し、踏みとどまった。

これでもし由宇にまで気味悪がるような反応をされてしまったら。孤立無援のまま、今度は失血死するまで血を吸われるかもしれない。

それに――

(由宇には、変な奴だと思われたくない)

ヴァンが喉の奥で残忍に笑う声が聞こえてくる。

聖は顔を上げて、ことさらに平静を装った。

「悪い。今から着替えて行くから、先に行ってて」

「そうじゃなくて。今お前の後ろに、何かいなかったか?」

鋭い洞察に、聖は思わず息を飲んだ。
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