守護霊は吸血鬼❤

24

「何だ？」

振り返った兄に、聖は弱々しい声で言うことしかできなかった。
　
「いや……何でもない」

誠は肩をすくめると、そのまま部屋を出ていった。

ドアの閉まる音は、断頭台の刃が振り下ろされるかのようだった。

突き刺さる牙の痛みに、聖は体を強張らせる。

「……やっ……」

「じっとしてろ」

思う存分血を吸い上げたヴァンがようやく離れると、聖は全身の力が奪われたような感覚でぐったりと崩れ落ちた。

「いい子だ、聖」

ヴァンは満足げに笑っている。目の前がぼやけて、意識が遠のく。

この男がどのような存在であるにせよ、昨夜に続いて今日まで、こんな風に決して美味しいとはいえない人の血を飲んで、こんなにも嬉々としているのはどう考えても異常だ。

そんな人間がいるとは思えない。

それに、何故か兄には見えていないらしい。ということは、ほかの人間も？

他人には見えないのなら、どうやってこの危機的状況を信じてもらえると言うのだろう。

何もかもが、理解の範疇をはるかに超えていた。

目の前が絶望に暗く染まってゆく。

「お前、吸血鬼って……どうして俺の血を……」

薄れゆく意識だからこそ聞けたのだが、疑念も反発も上手く言葉にはならなかった。