THE LAST WOLF

凪子

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【君に伝えたいこと】

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そして、今、俺はこの文章を書いている。

ここがどこなのか、今がいつなのか、それは言えない。

それでも今、俺が生きていること、そして今まで書いてきたのが紛れもない真実だということは確かだ。

世間では俺たちSacerd Raverは、残虐非道なテロリストだと言われている。

マスコミにそう報道するよう、政府が指示したからだ。

確かに俺たちはBBWの代表の吉田正義と、衛視たち百名近くを手にかけた。

バニシングナイトというゲームの参加者としては、これはルール違反と呼ぶべき行為だろう。

ただ、『楽園』は治外法権だ。

それは、参加者である俺たちにとっても例外じゃない。

それに、最初にルールを破ったのは向こうのほうだ。

奴らはバニシングナイトで勝利した非武装の俺たちを、問答無用で銃殺しようとした。

なのに世間じゃそのことは一切報じられず、まるで初めから俺たちが武器を持って乗り込み、無抵抗の人間を次々に殺したかのように言われている。

卑劣な犯罪集団だと思われていることが悔しくてならない。

Sacred Raverのメンバーも次々に検挙されている。

政府は俺たちの存在を、完全に世の中から抹消しようとしている。

BBWには新社長が立ったとも聞いた。

このままじゃ、きっとまた同じ悲劇が繰り返されるだろう。

なあ真珠。俺、分かったんだ。

今まで俺は、自分が正義の味方だと思ってた。

BBWを滅ぼして、『汝は人狼なりや?』を消し去れば、世の中に平和がやってくる。

みんなもきっと、それを望んでいるんだって。

人を疑ったり、陥れたり、騙したりすることなんて、本当はしたくないに決まってるって。そう思ってた。

でも、違った。その逆だったんだ。

今回、俺たちのことがマスコミで報道されるよりも先に、立ち上がったのは大衆だった。

俺たちのあの全国放送を見た後、インターネットやSNSが炎上し、無数の市井の人々が非難したんだ。

Sacred Raverを捕えろ。殺せ。あいつらはバニシングナイトを汚したんだと。

彼らは『汝は人狼なりや?』を愛し、BBWを熱狂的に支持していた。

しかも、そんな人のほうが大多数だった。

俺たちに賛同したり味方してくれる人は、ほとんどいなかった。

『汝は人狼なりや?』は俺たちが考えているよりもずっと、人を惹きつけ熱狂させていた。

もはや思考の根幹に、人狼思考ともいうべき考え方が根づいている。

このゲームなしに生活はあり得ないという中毒者も、思った以上に多かったんだ。

でも、どうしてだろうな。

人口に膾炙してから二十年以上もたつのに、何で人気が衰えずに増していくんだろう。

たかがゲームなんだから、いつかは飽きるはずだ。

誰もがそう考えていたはずなのに、今じゃ切り離せないほど分かちがたく生活と結びついている。

理由の一つは、このゲームに終わりがないということだ。

ロールプレイングゲームや対戦ゲームなら、ラスボスを倒せばゲームは終わる。

でも、『汝は人狼なりや?』は同じメンバーで繰り返し行っても役職によって内容が千変万化するし、メンバーを替えれば全く別のゲームになる。

百回やれば百回、新しい推理とストーリーが生まれる。

その多彩さに人が惹きつけられるというのは確かだ。

でも、恐らく本当の理由は別にある。
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