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【延長戦】
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管制室までたどりつくと、合言葉を言って俺と戸上さんは中に入った。
ドアにはバリケードが築かれており、中央には巨大なスクリーンモニター、その手前にパソコンや機械やパネルが並んでいる。
それらを物すごいスピードで操作しているのは古川さんだった。
後姿には、話しかけることすらためらわれるほどの気迫が漂っている。
「お帰り、歩」
のんが近寄ってきて、俺の頬に手を伸ばした。
「怪我は?」
「してない。でも、戸上さんが」
俺が指し示すと、戸上さんは鈍い笑みで首を振る。
「大したことないよ。それより放送の準備をしないと」
「大丈夫。もうちょっとで電波をジャックできる」
普段とは別人のような様子で、きびきびと古川さんが言った。
「傷診るからこっち来て」
奥のほうで手招きしたのは真知子さんだった。そのそばに、雪妃が包帯を持って立っている。
違和感に気づいて俺は言った。
「佐藤さんと巳継君は?」
別れるとき、二人も確かにいたはずだ。
「巳継は外を見張ってる。佐藤さんは……」
のんは言い淀んだ。嫌な予感がした。
「管制室を占拠するとき、銃撃戦になって。それで」
「……そうか」
としか言えず、俺はうつむいた。
これで仲間は俺、のん、雪妃、真知子さん、巳継君、戸上さん、古川さんの七人になった。
啓作さんと野村さんが生きていてくれればと思うが、その見込みは限りなく薄い。
たった十二人で、これだけの武器を持った相手を殺して管制室を占拠できたのだから、上出来だと言えるのかもしれない。
けど、俺たちは誰も死なないために、一人として犠牲にならないよう訓練に訓練を重ねてきた。
ここにいるのは戦闘能力と知力を兼ね備え、この命がけの作戦に参加することを自ら志願した、選りすぐりの十二名だった。
覚悟はしていたが、やっぱり仲間の死は身に堪えた。
ドアにはバリケードが築かれており、中央には巨大なスクリーンモニター、その手前にパソコンや機械やパネルが並んでいる。
それらを物すごいスピードで操作しているのは古川さんだった。
後姿には、話しかけることすらためらわれるほどの気迫が漂っている。
「お帰り、歩」
のんが近寄ってきて、俺の頬に手を伸ばした。
「怪我は?」
「してない。でも、戸上さんが」
俺が指し示すと、戸上さんは鈍い笑みで首を振る。
「大したことないよ。それより放送の準備をしないと」
「大丈夫。もうちょっとで電波をジャックできる」
普段とは別人のような様子で、きびきびと古川さんが言った。
「傷診るからこっち来て」
奥のほうで手招きしたのは真知子さんだった。そのそばに、雪妃が包帯を持って立っている。
違和感に気づいて俺は言った。
「佐藤さんと巳継君は?」
別れるとき、二人も確かにいたはずだ。
「巳継は外を見張ってる。佐藤さんは……」
のんは言い淀んだ。嫌な予感がした。
「管制室を占拠するとき、銃撃戦になって。それで」
「……そうか」
としか言えず、俺はうつむいた。
これで仲間は俺、のん、雪妃、真知子さん、巳継君、戸上さん、古川さんの七人になった。
啓作さんと野村さんが生きていてくれればと思うが、その見込みは限りなく薄い。
たった十二人で、これだけの武器を持った相手を殺して管制室を占拠できたのだから、上出来だと言えるのかもしれない。
けど、俺たちは誰も死なないために、一人として犠牲にならないよう訓練に訓練を重ねてきた。
ここにいるのは戦闘能力と知力を兼ね備え、この命がけの作戦に参加することを自ら志願した、選りすぐりの十二名だった。
覚悟はしていたが、やっぱり仲間の死は身に堪えた。
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