THE LAST WOLF

凪子

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【延長戦】

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BIG BAD WOLFは破竹の勢いで快進撃を続けた。

同業他社がいなかったというのも一因だと思う。

今まで体験型ゲームを行う会社も、ネットゲームやアプリを開発する会社もあったけど、その双方の要素を備えた会社はあまりなかったように思う。

それにスポンサーからの資金も潤沢だったから、全国各地でさまざまな工夫をこらしたイベントを行うことができたし、莫大な広告宣伝費を使うことができた。

一見、前途洋々のように見えたけど、そのころから既に小鳥遊周は後悔していたという。

BIG BAD WOLFを法人化するべきじゃなかった。

このまま行けば組織はどんどん大きくなり、自分の手には負えなくなる。

サークルのまま留めておけば、いつか自分の意思で解散することもできた。

けれども今は顧客の存在があり、社員の生活があり、株主の意向がある。

そう簡単に自分の手で終わらせることはできない。

言い知れぬ不安を感じる小鳥遊周とは対照的に、専務取締役となった吉田正義はいきいきと仕事に打ち込んでいた。

大金を動かし、イベント用の土地を購入し、イベントに優先的に招待されるプレミアム会員権を売りさばく。

いつしか本業である『汝は人狼なりや?』を離れ、株式やFX、先物の売買にも手を出すようになった。

翌年になっても『汝は人狼なりや?』の加熱は止まらず、とうとうゲームに金銭を賭ける者があらわれる。

違法賭博である。

この事件をきっかけに教育者などから懐疑的な意見が出るようになり、一時的にブームは沈静化したかに見えた。

賭博をした者はBBWとは無関係の人間だったけれど、このゲーム自体の危険性、あまりに熱中しすぎて相手への配慮を忘れて攻撃してしまうこと、人間関係の深刻な悪化につながることなどが指摘されるようになった。

このとき、小鳥遊周はむしろほっとしたという。

これでようやくBBWを畳むことができると。潮時が来たのだと。

もともと仲間内で楽しんでいた『汝は人狼なりや?』がこれほど大きな活動になってしまったことや、自分のもとに大金が押し寄せてきたことにも困惑していた。

それに何より、このゲームは危険だということを周も感じ始めていたのだ。

だが、事態はそう簡単には収まらない。

吉田正義がスポンサーの一つである桜庭建設に働きかけ、BBWを守ってくれるよう訴えたのだ。

当時、BBWは賭博法の絡みもあって風当たりが強く、政府に目をつけられていた。

桜庭建設は国内随一の建設会社で、政界とは太いパイプを持つ。

その桜庭建設に仲立ちしてもらって、吉田正義はBBWが潰されないよう周到な根回しを行い、ここまでに得た莫大な金の力を使って政界に強力なコネをつくることに成功した。
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