102 / 121
【延長戦】
100
しおりを挟む
BIG BAD WOLFは破竹の勢いで快進撃を続けた。
同業他社がいなかったというのも一因だと思う。
今まで体験型ゲームを行う会社も、ネットゲームやアプリを開発する会社もあったけど、その双方の要素を備えた会社はあまりなかったように思う。
それにスポンサーからの資金も潤沢だったから、全国各地でさまざまな工夫をこらしたイベントを行うことができたし、莫大な広告宣伝費を使うことができた。
一見、前途洋々のように見えたけど、そのころから既に小鳥遊周は後悔していたという。
BIG BAD WOLFを法人化するべきじゃなかった。
このまま行けば組織はどんどん大きくなり、自分の手には負えなくなる。
サークルのまま留めておけば、いつか自分の意思で解散することもできた。
けれども今は顧客の存在があり、社員の生活があり、株主の意向がある。
そう簡単に自分の手で終わらせることはできない。
言い知れぬ不安を感じる小鳥遊周とは対照的に、専務取締役となった吉田正義はいきいきと仕事に打ち込んでいた。
大金を動かし、イベント用の土地を購入し、イベントに優先的に招待されるプレミアム会員権を売りさばく。
いつしか本業である『汝は人狼なりや?』を離れ、株式やFX、先物の売買にも手を出すようになった。
翌年になっても『汝は人狼なりや?』の加熱は止まらず、とうとうゲームに金銭を賭ける者があらわれる。
違法賭博である。
この事件をきっかけに教育者などから懐疑的な意見が出るようになり、一時的にブームは沈静化したかに見えた。
賭博をした者はBBWとは無関係の人間だったけれど、このゲーム自体の危険性、あまりに熱中しすぎて相手への配慮を忘れて攻撃してしまうこと、人間関係の深刻な悪化につながることなどが指摘されるようになった。
このとき、小鳥遊周はむしろほっとしたという。
これでようやくBBWを畳むことができると。潮時が来たのだと。
もともと仲間内で楽しんでいた『汝は人狼なりや?』がこれほど大きな活動になってしまったことや、自分のもとに大金が押し寄せてきたことにも困惑していた。
それに何より、このゲームは危険だということを周も感じ始めていたのだ。
だが、事態はそう簡単には収まらない。
吉田正義がスポンサーの一つである桜庭建設に働きかけ、BBWを守ってくれるよう訴えたのだ。
当時、BBWは賭博法の絡みもあって風当たりが強く、政府に目をつけられていた。
桜庭建設は国内随一の建設会社で、政界とは太いパイプを持つ。
その桜庭建設に仲立ちしてもらって、吉田正義はBBWが潰されないよう周到な根回しを行い、ここまでに得た莫大な金の力を使って政界に強力なコネをつくることに成功した。
同業他社がいなかったというのも一因だと思う。
今まで体験型ゲームを行う会社も、ネットゲームやアプリを開発する会社もあったけど、その双方の要素を備えた会社はあまりなかったように思う。
それにスポンサーからの資金も潤沢だったから、全国各地でさまざまな工夫をこらしたイベントを行うことができたし、莫大な広告宣伝費を使うことができた。
一見、前途洋々のように見えたけど、そのころから既に小鳥遊周は後悔していたという。
BIG BAD WOLFを法人化するべきじゃなかった。
このまま行けば組織はどんどん大きくなり、自分の手には負えなくなる。
サークルのまま留めておけば、いつか自分の意思で解散することもできた。
けれども今は顧客の存在があり、社員の生活があり、株主の意向がある。
そう簡単に自分の手で終わらせることはできない。
言い知れぬ不安を感じる小鳥遊周とは対照的に、専務取締役となった吉田正義はいきいきと仕事に打ち込んでいた。
大金を動かし、イベント用の土地を購入し、イベントに優先的に招待されるプレミアム会員権を売りさばく。
いつしか本業である『汝は人狼なりや?』を離れ、株式やFX、先物の売買にも手を出すようになった。
翌年になっても『汝は人狼なりや?』の加熱は止まらず、とうとうゲームに金銭を賭ける者があらわれる。
違法賭博である。
この事件をきっかけに教育者などから懐疑的な意見が出るようになり、一時的にブームは沈静化したかに見えた。
賭博をした者はBBWとは無関係の人間だったけれど、このゲーム自体の危険性、あまりに熱中しすぎて相手への配慮を忘れて攻撃してしまうこと、人間関係の深刻な悪化につながることなどが指摘されるようになった。
このとき、小鳥遊周はむしろほっとしたという。
これでようやくBBWを畳むことができると。潮時が来たのだと。
もともと仲間内で楽しんでいた『汝は人狼なりや?』がこれほど大きな活動になってしまったことや、自分のもとに大金が押し寄せてきたことにも困惑していた。
それに何より、このゲームは危険だということを周も感じ始めていたのだ。
だが、事態はそう簡単には収まらない。
吉田正義がスポンサーの一つである桜庭建設に働きかけ、BBWを守ってくれるよう訴えたのだ。
当時、BBWは賭博法の絡みもあって風当たりが強く、政府に目をつけられていた。
桜庭建設は国内随一の建設会社で、政界とは太いパイプを持つ。
その桜庭建設に仲立ちしてもらって、吉田正義はBBWが潰されないよう周到な根回しを行い、ここまでに得た莫大な金の力を使って政界に強力なコネをつくることに成功した。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

私と継母の極めて平凡な日常
当麻月菜
ライト文芸
ある日突然、父が再婚した。そして再婚後、たった三ヶ月で失踪した。
残されたのは私、橋坂由依(高校二年生)と、継母の琴子さん(32歳のキャリアウーマン)の二人。
「ああ、この人も出て行くんだろうな。私にどれだけ自分が不幸かをぶちまけて」
そう思って覚悟もしたけれど、彼女は出て行かなかった。
そうして始まった継母と私の二人だけの日々は、とても淡々としていながら酷く穏やかで、極めて平凡なものでした。
※他のサイトにも重複投稿しています。
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる