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【延長戦】
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この国は呪われている。いつしか、そう思うようになった。
BBWが俺たちにかけた呪い。
それは『汝は人狼なりや?』というゲームを使って、国中の人間がお互いを信用できなくすることだ。
そうなれば、その先にどんな未来が待ち受けているかは想像つくだろう?
多分、そう遠くない未来に、この国は内側から崩壊する。
子は親を信じず、妻は夫を信じず、教師は生徒を信じず、兄弟同士は騙し合い、友人同士は裏切り合い、恋人同士は疑い合う。
そうして警察官、政治家、医師、裁判官、あらゆる職業の人間への信頼が崩れ去り、空前絶後の大パニックが起こるだろう。
自分以外の誰も信用できなくなる、恐ろしい絶望の時代が待っている。
行きすぎた妄想だって?今はそうかもしれない。
でも十年後、二十年後、五十年後はどうだろう。
君はきっと、俺の言っていることが正しかったと思い知ることになる。確信を持ってそう言える。
もう既に、根深い病はこの国を侵している。
じわじわと国民の間に不信感が広がっており、小さな事件が頻発している。
でも、まだこれは水面下での出来事にすぎない。
表層にあらわれたときには、手の施しようのない事態になっているだろう。
多分、最初はBBWも、そんなことは考えていなかったんだろう。
ただ単純に楽しいから『汝は人狼なりや?』を開発し、アレンジして普及した。
まさか、これほどまでに流行るとも、このゲームに思わぬ弊害が潜んでいるとも気づいていなかったに違いない。
でも、途中ではっきりとした分岐点があった。
十六年前の『人狼法の制定』と、翌年に開催された『バニシングナイト』だ。
人狼法はBBWを保護し、バニシングナイトを合法化するための法律だ。
東京都の沖合に人工島を設置し、そこで命を賭けたゲーム『バニシングナイト』を開催することを許可する。
その上、島全体を治外法権とし、いわばBBWを『国家』として認めた。
これによってBBWは、ゲームのルールにのっとってさえいれば合法的に人を殺せるという特権を得た。
この世で最も高い商品は命だ。
バニシングナイトは命のかかった残虐極まりないショーだ。見たいと思わないはずがない。
BBW代表取締役となった吉田正義、ただ一人の頭に浮かんだ狂ったアイデアに、国が全面的に味方する形となった。
そして第一回バニシングナイトが開催され、父さんは殺された。
いや――バニシングナイトの目的は、そもそも合法的に父さんを殺すことだった。
俺の父親の名は、小鳥遊周。
『汝は人狼なりや?』の開発者であり、BBWの創設者の一人だ。
吉田正義とは大学の同級生に当たる。
そう、この呪われたゲーム『汝は人狼なりや?』を開発したのは、ほかならぬ俺の父親なんだ。
BBWが俺たちにかけた呪い。
それは『汝は人狼なりや?』というゲームを使って、国中の人間がお互いを信用できなくすることだ。
そうなれば、その先にどんな未来が待ち受けているかは想像つくだろう?
多分、そう遠くない未来に、この国は内側から崩壊する。
子は親を信じず、妻は夫を信じず、教師は生徒を信じず、兄弟同士は騙し合い、友人同士は裏切り合い、恋人同士は疑い合う。
そうして警察官、政治家、医師、裁判官、あらゆる職業の人間への信頼が崩れ去り、空前絶後の大パニックが起こるだろう。
自分以外の誰も信用できなくなる、恐ろしい絶望の時代が待っている。
行きすぎた妄想だって?今はそうかもしれない。
でも十年後、二十年後、五十年後はどうだろう。
君はきっと、俺の言っていることが正しかったと思い知ることになる。確信を持ってそう言える。
もう既に、根深い病はこの国を侵している。
じわじわと国民の間に不信感が広がっており、小さな事件が頻発している。
でも、まだこれは水面下での出来事にすぎない。
表層にあらわれたときには、手の施しようのない事態になっているだろう。
多分、最初はBBWも、そんなことは考えていなかったんだろう。
ただ単純に楽しいから『汝は人狼なりや?』を開発し、アレンジして普及した。
まさか、これほどまでに流行るとも、このゲームに思わぬ弊害が潜んでいるとも気づいていなかったに違いない。
でも、途中ではっきりとした分岐点があった。
十六年前の『人狼法の制定』と、翌年に開催された『バニシングナイト』だ。
人狼法はBBWを保護し、バニシングナイトを合法化するための法律だ。
東京都の沖合に人工島を設置し、そこで命を賭けたゲーム『バニシングナイト』を開催することを許可する。
その上、島全体を治外法権とし、いわばBBWを『国家』として認めた。
これによってBBWは、ゲームのルールにのっとってさえいれば合法的に人を殺せるという特権を得た。
この世で最も高い商品は命だ。
バニシングナイトは命のかかった残虐極まりないショーだ。見たいと思わないはずがない。
BBW代表取締役となった吉田正義、ただ一人の頭に浮かんだ狂ったアイデアに、国が全面的に味方する形となった。
そして第一回バニシングナイトが開催され、父さんは殺された。
いや――バニシングナイトの目的は、そもそも合法的に父さんを殺すことだった。
俺の父親の名は、小鳥遊周。
『汝は人狼なりや?』の開発者であり、BBWの創設者の一人だ。
吉田正義とは大学の同級生に当たる。
そう、この呪われたゲーム『汝は人狼なりや?』を開発したのは、ほかならぬ俺の父親なんだ。
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