THE LAST WOLF

凪子

文字の大きさ
上 下
100 / 121
【延長戦】

98

しおりを挟む
この国は呪われている。いつしか、そう思うようになった。

BBWが俺たちにかけた呪い。

それは『汝は人狼なりや?』というゲームを使って、国中の人間がお互いを信用できなくすることだ。

そうなれば、その先にどんな未来が待ち受けているかは想像つくだろう?

多分、そう遠くない未来に、この国は内側から崩壊する。

子は親を信じず、妻は夫を信じず、教師は生徒を信じず、兄弟同士は騙し合い、友人同士は裏切り合い、恋人同士は疑い合う。

そうして警察官、政治家、医師、裁判官、あらゆる職業の人間への信頼が崩れ去り、空前絶後の大パニックが起こるだろう。

自分以外の誰も信用できなくなる、恐ろしい絶望の時代が待っている。

行きすぎた妄想だって?今はそうかもしれない。

でも十年後、二十年後、五十年後はどうだろう。

君はきっと、俺の言っていることが正しかったと思い知ることになる。確信を持ってそう言える。

もう既に、根深い病はこの国を侵している。

じわじわと国民の間に不信感が広がっており、小さな事件が頻発している。

でも、まだこれは水面下での出来事にすぎない。

表層にあらわれたときには、手の施しようのない事態になっているだろう。

多分、最初はBBWも、そんなことは考えていなかったんだろう。

ただ単純に楽しいから『汝は人狼なりや?』を開発し、アレンジして普及した。

まさか、これほどまでに流行るとも、このゲームに思わぬ弊害が潜んでいるとも気づいていなかったに違いない。

でも、途中ではっきりとした分岐点があった。

十六年前の『人狼法の制定』と、翌年に開催された『バニシングナイト』だ。

人狼法はBBWを保護し、バニシングナイトを合法化するための法律だ。

東京都の沖合に人工島を設置し、そこで命を賭けたゲーム『バニシングナイト』を開催することを許可する。

その上、島全体を治外法権とし、いわばBBWを『国家』として認めた。

これによってBBWは、ゲームのルールにのっとってさえいれば合法的に人を殺せるという特権を得た。

この世で最も高い商品は命だ。

バニシングナイトは命のかかった残虐極まりないショーだ。見たいと思わないはずがない。

BBW代表取締役となった吉田正義、ただ一人の頭に浮かんだ狂ったアイデアに、国が全面的に味方する形となった。

そして第一回バニシングナイトが開催され、父さんは殺された。

いや――バニシングナイトの目的は、そもそも合法的に父さんを殺すことだった。

俺の父親の名は、小鳥遊周たかなし・あまね

『汝は人狼なりや?』の開発者であり、BBWの創設者の一人だ。

吉田正義とは大学の同級生に当たる。

そう、この呪われたゲーム『汝は人狼なりや?』を開発したのは、ほかならぬ俺の父親なんだ。





しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

護国の鳥

凪子
ファンタジー
異世界×士官学校×サスペンス!! サイクロイド士官学校はエスペラント帝国北西にある、国内最高峰の名門校である。 周囲を海に囲われた孤島を学び舎とするのは、十五歳の選りすぐりの少年達だった。 首席の問題児と呼ばれる美貌の少年ルート、天真爛漫で無邪気な子供フィン、軽薄で余裕綽々のレッド、大貴族の令息ユリシス。 同じ班に編成された彼らは、教官のルベリエや医務官のラグランジュ達と共に、士官候補生としての苛酷な訓練生活を送っていた。 外の世界から厳重に隔離され、治外法権下に置かれているサイクロイドでは、生徒の死すら明るみに出ることはない。 ある日同級生の突然死を目の当たりにし、ユリシスは不審を抱く。 校内に潜む闇と秘められた事実に近づいた四人は、否応なしに事件に巻き込まれていく……!

罰ゲームから始まる恋

アマチュア作家
ライト文芸
ある日俺は放課後の教室に呼び出された。そこで瑠璃に告白されカップルになる。 しかしその告白には秘密があって罰ゲームだったのだ。 それ知った俺は別れようとするも今までの思い出が頭を駆け巡るように浮かび、俺は瑠璃を好きになってしまたことに気づく そして俺は罰ゲームの期間内に惚れさせると決意する 罰ゲームで告られた男が罰ゲームで告白した女子を惚れさせるまでのラブコメディである。 ドリーム大賞12位になりました。 皆さんのおかげですありがとうございます

怪物どもが蠢く島

湖城マコト
ホラー
大学生の綿上黎一は謎の組織に拉致され、絶海の孤島でのデスゲームに参加させられる。 クリア条件は至ってシンプル。この島で二十四時間生き残ることのみ。しかしこの島には、組織が放った大量のゾンビが蠢いていた。 黎一ら十七名の参加者は果たして、このデスゲームをクリアすることが出来るのか? 次第に明らかになっていく参加者達の秘密。この島で蠢く怪物は、決してゾンビだけではない。

全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。 遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。 本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。 優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。

神楽囃子の夜

紫音@キャラ文芸大賞参加中!
ライト文芸
※第6回ライト文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。応援してくださった皆様、ありがとうございました。 【あらすじ】  地元の夏祭りを訪れていた少年・狭野笙悟(さのしょうご)は、そこで見かけた幽霊の少女に一目惚れしてしまう。彼女が現れるのは年に一度、祭りの夜だけであり、その姿を見ることができるのは狭野ただ一人だけだった。  年を重ねるごとに想いを募らせていく狭野は、やがて彼女に秘められた意外な真実にたどり着く……。  四人の男女の半生を描く、時を越えた現代ファンタジー。  

陸のくじら侍 -元禄の竜-

陸 理明
歴史・時代
元禄時代、江戸に「くじら侍」と呼ばれた男がいた。かつて武士であるにも関わらず鯨漁に没頭し、そして誰も知らない理由で江戸に流れてきた赤銅色の大男――権藤伊佐馬という。海の巨獣との命を削る凄絶な戦いの果てに会得した正確無比な投げ銛術と、苛烈なまでの剛剣の使い手でもある伊佐馬は、南町奉行所の戦闘狂の美貌の同心・青碕伯之進とともに江戸の悪を討ちつつ、日がな一日ずっと釣りをして生きていくだけの暮らしを続けていた…… 

「桜の樹の下で、笑えたら」✨奨励賞受賞✨

悠里
ライト文芸
高校生になる前の春休み。自分の16歳の誕生日に、幼馴染の悠斗に告白しようと決めていた心春。 会う約束の前に、悠斗が事故で亡くなって、叶わなかった告白。 (霊など、ファンタジー要素を含みます) 安達 心春 悠斗の事が出会った時から好き 相沢 悠斗 心春の幼馴染 上宮 伊織 神社の息子  テーマは、「切ない別れ」からの「未来」です。 最後までお読み頂けたら、嬉しいです(*'ω'*) 

僕《わたし》は誰でしょう

紫音@キャラ文芸大賞参加中!
青春
※第7回ライト文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。応援してくださった皆様、ありがとうございました。 【あらすじ】  交通事故の後遺症で記憶喪失になってしまった女子高生・比良坂すずは、自分が女であることに違和感を抱く。 「自分はもともと男ではなかったか?」  事故後から男性寄りの思考になり、周囲とのギャップに悩む彼女は、次第に身に覚えのないはずの記憶を思い出し始める。まるで別人のものとしか思えないその記憶は、一体どこから来たのだろうか。  見知らぬ思い出をめぐる青春SF。 ※表紙イラスト=ミカスケ様

処理中です...