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【延長戦】
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俺たちが、なぜここまでして『楽園』に乗り込み、たくさんの人間を殺してまでBBWを壊滅させたいのか。
その理由は、このゲームの本質にある。
だからこそ、俺はここまでバニシングナイトの経緯を詳細に書いてきた。
ここまで読んでくれたのなら、もう分かるだろう。
このゲーム『汝は人狼なりや?』は人を疑い、欺き、裏切り、騙すゲームだ。
仲間内で誰が人狼=裏切り者かを疑い合い、多数決で強制的に吊るし上げ、それをどちらかが負けるまで繰り返すことが趣旨となっている。
しかも、その疑い合いには当然証拠がなく、特に初期の段階では論理的な推理が介在する余地はない。
フィーリングや勘、何となくで殺される人が決められる。
これはもはやいじめに類するものであり、いうなれば村八分だ。
無実なのに強制的に殺されたプレーヤーは気分のいいものではないし、正しい主張をしているのに信じてもらえない者、あるいは夜のうちに人狼に消される者も不満が溜まるだろう。
そこには不和が生まれ、信頼関係が崩れ、不信感と敵意が生じる温床となる。
『汝は人狼なりや?』は人間関係を破壊し、目の前の相手を信じられなくさせる、恐ろしい力を持っている。
人心を荒ませる呪われた遊びだ。
「たかが遊びだろ」と、君は笑うかもしれない。
だけど俺は実際に見てきた。
このゲームを通じて相手を疑い、不仲になった友人たち。
お互いを憎み合い、別れることになった恋人。殺し合いの喧嘩にまで発展した親子。
『汝は人狼なりや?』さえ知らず、プレイしていなければ、彼らの関係は壊れることはなかった。
君が考えている以上に、このゲームの持つ力は絶大なものなんだ。
『汝は人狼なりや?』の危険性に気づいたのは、もちろん俺たちだけじゃない。
有識者の中には、かなり早い段階からこのゲームはほどほどにするべきだ、あるいは年齢制限をかけるべきだという声があり、中には完全に禁止するべきだという意見もあった。
もっと言うなら、このゲームの原案となった遊びはロシアで生まれたんだけど、ロシアじゃとっくの昔にこのゲームを法律で禁止している。
だけど、それらの事実や意見は人狼法が制定されたことによって、事実上黙殺された。
急速に発展したBBWが、財力と権力に物を言わせて自社に都合の悪いものを全て封じたんだ。
このゲームはもともと、俺たちのような日本人には向いていたんだと思う。
相手の顔色を読むこと、誰もが表面上は取り繕いながら裏で誰かを疑っていること、建前と本音を使い分けること。
密告、嘘、仲間はずれ、多数決、権謀術数――日本人のお家芸だ。
ロシアやドイツじゃそこまで浸透しなかったこのゲームが、短期間でこれほど爆発的に流行したのも、このゲームが俺たちの精神性に合っていたからだと思う。
そう、楽しいんだ、人を追い落とすのは。
人を裏切り、陥れ、お互いがお互いを笑顔で騙し合うのは、この上なく興奮する遊びなんだ。
『汝は人狼なりや?』は推理力と判断力、思考力を必要とする高度な知的ゲームだ。
はまればはまるほどその魅力は奥が深く、決して飽きることはない。
楽しいから、楽しすぎるから、なかなか抜け出すことができないんだ。
でも俺は気づいた。
楽しいから、楽しすぎるから、やめなければいけないんだと。
その理由は、このゲームの本質にある。
だからこそ、俺はここまでバニシングナイトの経緯を詳細に書いてきた。
ここまで読んでくれたのなら、もう分かるだろう。
このゲーム『汝は人狼なりや?』は人を疑い、欺き、裏切り、騙すゲームだ。
仲間内で誰が人狼=裏切り者かを疑い合い、多数決で強制的に吊るし上げ、それをどちらかが負けるまで繰り返すことが趣旨となっている。
しかも、その疑い合いには当然証拠がなく、特に初期の段階では論理的な推理が介在する余地はない。
フィーリングや勘、何となくで殺される人が決められる。
これはもはやいじめに類するものであり、いうなれば村八分だ。
無実なのに強制的に殺されたプレーヤーは気分のいいものではないし、正しい主張をしているのに信じてもらえない者、あるいは夜のうちに人狼に消される者も不満が溜まるだろう。
そこには不和が生まれ、信頼関係が崩れ、不信感と敵意が生じる温床となる。
『汝は人狼なりや?』は人間関係を破壊し、目の前の相手を信じられなくさせる、恐ろしい力を持っている。
人心を荒ませる呪われた遊びだ。
「たかが遊びだろ」と、君は笑うかもしれない。
だけど俺は実際に見てきた。
このゲームを通じて相手を疑い、不仲になった友人たち。
お互いを憎み合い、別れることになった恋人。殺し合いの喧嘩にまで発展した親子。
『汝は人狼なりや?』さえ知らず、プレイしていなければ、彼らの関係は壊れることはなかった。
君が考えている以上に、このゲームの持つ力は絶大なものなんだ。
『汝は人狼なりや?』の危険性に気づいたのは、もちろん俺たちだけじゃない。
有識者の中には、かなり早い段階からこのゲームはほどほどにするべきだ、あるいは年齢制限をかけるべきだという声があり、中には完全に禁止するべきだという意見もあった。
もっと言うなら、このゲームの原案となった遊びはロシアで生まれたんだけど、ロシアじゃとっくの昔にこのゲームを法律で禁止している。
だけど、それらの事実や意見は人狼法が制定されたことによって、事実上黙殺された。
急速に発展したBBWが、財力と権力に物を言わせて自社に都合の悪いものを全て封じたんだ。
このゲームはもともと、俺たちのような日本人には向いていたんだと思う。
相手の顔色を読むこと、誰もが表面上は取り繕いながら裏で誰かを疑っていること、建前と本音を使い分けること。
密告、嘘、仲間はずれ、多数決、権謀術数――日本人のお家芸だ。
ロシアやドイツじゃそこまで浸透しなかったこのゲームが、短期間でこれほど爆発的に流行したのも、このゲームが俺たちの精神性に合っていたからだと思う。
そう、楽しいんだ、人を追い落とすのは。
人を裏切り、陥れ、お互いがお互いを笑顔で騙し合うのは、この上なく興奮する遊びなんだ。
『汝は人狼なりや?』は推理力と判断力、思考力を必要とする高度な知的ゲームだ。
はまればはまるほどその魅力は奥が深く、決して飽きることはない。
楽しいから、楽しすぎるから、なかなか抜け出すことができないんだ。
でも俺は気づいた。
楽しいから、楽しすぎるから、やめなければいけないんだと。
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