THE LAST WOLF

凪子

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【延長戦】

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「ありがとうございます」

「そんな気負わなくても大丈夫。啓作が、あいつら全部ぶちのめすから」

先ほどまでとは打って変わった、はつらつとした笑顔で真知子さんは言った。まったく、大した演技力だ。

確かに啓作さんの戦闘能力は極めて高い。今も的確な狙撃と格闘とで次々と相手を殺していく。

心なしか、浮かべた笑みに猟奇性すら感じるほどだ。

「紫帆さん!」

悲鳴に反応して、俺は声の方向に目をやった。

俺たちのいる側と反対側、室内の前方左隅にあおむけに倒れている紫帆さんの姿が見えた。

胸にあいた大きな穴から流れ出した血が、絵具のように床に広がっている。

蒼白な顔が唇を動かしかけたが、声にはならず事切れた。

紫帆さんのそばで膝をつき、手を握っていたのんに衛視が銃を向ける。

その前に立ちはだかったのは野村さんだった。

彼は自分を盾にするようにしてのんを守ると、両手に銃を持って衛視たちを撃ち続けた。

だが、その間にみずからも弾丸を浴びる。

「行け、歩」

銃撃の狭間で、野村さんはこちらに背を向けたまま言った。

攻撃が途切れた隙を見て、のんがこっちに向かって走ってくる。

真知子が援護射撃を行い、銃弾が雨あられと降り注ぐ中、俺、のん、真知子さん、古川さんの四人が合流した。

「ここは俺と啓作で何とかする。先に行け」

「野村さん」

「行ってくれ」

その瞬間、部屋の後方の扉が開き、さらに衛視の援軍がなだれ込んできた。

――殺される。

暗い絶望が押し寄せ、何も考えられなくなったそのとき、

「目と耳ふさげ!」

声と同時に轟音と、目の焼けるような光が部屋全体を覆った。

――スタングレネード……!

衛視たちの行動が停止し、俺は何者かに腕をつかまれ、強い力で謁見の間の外へと引っ張り出された。

耳をふさぎ損ねたせいで、激しい耳鳴りが続いている。

うっすらと目をあけて見ると、戸上明典、佐藤和男、日高巳継、それに麻生雪妃がそこにいた。

「行くぞ」

戸上さんの唇が動き、確かにそう言った。

俺は頷き、合流した人狼組とともに走り出す。

扉が閉まる一瞬、啓作さんと野村さんが笑って手を振ったような気がした。


















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