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【7日目】
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もっと時間がほしい。もう一度、最初からの流れを頭の中で整理したい。
そしたらきっと、簡単に答えに辿りつけるはずなのに。
「正直、のんの話がなかったら、俺はお前に投票してたわ。めっちゃ疑っとったしな。でも俺が白でお前も白なんやから、残ってるのロリータちゃんしかおらんやろ」
「私は小鳥遊さんを信じます」
麻生雪妃は凛とした顔で言った。
「小鳥遊さんなら、必ず正しい結論が導き出せるはずです。最後の選択をあなたに委ねます」
その瞬間、鐘の音が鳴り響いた。
『制限時間が終了しました。プレーヤーは今後、一切の発言をしないでください』
日没が訪れ、最後の投票が始まる。
勝つのは村人か、それとも人狼か。
『端末を使って、本日処刑する人物に投票してください。制限時間は一分です』
こうなると、匿名投票の意味はない。
麻生雪妃は片岡啓作に、片岡啓作は麻生雪妃に投票するのは明らかだ。
そして最後の一票――俺の投じる票が勝敗を決する。
俺は目を閉じた。
愚かな俺には、どちらの言うことももっともらしく聞こえ、筋が通っているように思える。
人狼は役職者か頭の切れる者、推理力のある者を優先的に噛んでいく。
俺みたいに頭のよくない村人を最後に残せば、誤った選択をしてくれる可能性が高いからだ。
自分のせいで村が負けるなんて、そんなのは絶対嫌だ。
あのほぼ負けが見えていた絶体絶命の状況で、のんの助けによって奇跡的にここまで逆転できたのに。
頭を空っぽにして、脳内からあらゆる言葉を遮断する。
言葉は要らない。嘘や虚飾が含まれた、中途半端な情報しか手元にはない。
自分の推理力も思考力にも勘にも自信がない。
だったら、最後に頼れるのは観察力と運だ。
人間は言葉では簡単に嘘がつけるけど、表情まで完璧に装うことは難しい。
俺は喋るのが苦手なかわりに、ほかの誰よりもプレーヤーの顔やしぐさを観察してきた。
言葉ではなく、今まで積み上げてきた視覚からの情報を信じよう。
俺はもう一度、ゲーム開始時点から今に至るまでの全プレーヤーの表情を脳内で巻き戻し、超高速で再生した。
【この人に投票しますか?】
指が震える。
イエスのボタンを押すと、思わず両手を組み合わせて目をつむった。
最後はもう祈るしかない。自分の選択が正しいものであることを。
【7日目・終】
そしたらきっと、簡単に答えに辿りつけるはずなのに。
「正直、のんの話がなかったら、俺はお前に投票してたわ。めっちゃ疑っとったしな。でも俺が白でお前も白なんやから、残ってるのロリータちゃんしかおらんやろ」
「私は小鳥遊さんを信じます」
麻生雪妃は凛とした顔で言った。
「小鳥遊さんなら、必ず正しい結論が導き出せるはずです。最後の選択をあなたに委ねます」
その瞬間、鐘の音が鳴り響いた。
『制限時間が終了しました。プレーヤーは今後、一切の発言をしないでください』
日没が訪れ、最後の投票が始まる。
勝つのは村人か、それとも人狼か。
『端末を使って、本日処刑する人物に投票してください。制限時間は一分です』
こうなると、匿名投票の意味はない。
麻生雪妃は片岡啓作に、片岡啓作は麻生雪妃に投票するのは明らかだ。
そして最後の一票――俺の投じる票が勝敗を決する。
俺は目を閉じた。
愚かな俺には、どちらの言うことももっともらしく聞こえ、筋が通っているように思える。
人狼は役職者か頭の切れる者、推理力のある者を優先的に噛んでいく。
俺みたいに頭のよくない村人を最後に残せば、誤った選択をしてくれる可能性が高いからだ。
自分のせいで村が負けるなんて、そんなのは絶対嫌だ。
あのほぼ負けが見えていた絶体絶命の状況で、のんの助けによって奇跡的にここまで逆転できたのに。
頭を空っぽにして、脳内からあらゆる言葉を遮断する。
言葉は要らない。嘘や虚飾が含まれた、中途半端な情報しか手元にはない。
自分の推理力も思考力にも勘にも自信がない。
だったら、最後に頼れるのは観察力と運だ。
人間は言葉では簡単に嘘がつけるけど、表情まで完璧に装うことは難しい。
俺は喋るのが苦手なかわりに、ほかの誰よりもプレーヤーの顔やしぐさを観察してきた。
言葉ではなく、今まで積み上げてきた視覚からの情報を信じよう。
俺はもう一度、ゲーム開始時点から今に至るまでの全プレーヤーの表情を脳内で巻き戻し、超高速で再生した。
【この人に投票しますか?】
指が震える。
イエスのボタンを押すと、思わず両手を組み合わせて目をつむった。
最後はもう祈るしかない。自分の選択が正しいものであることを。
【7日目・終】
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