THE LAST WOLF

凪子

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【7日目】

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「小鳥遊、お前、昨日聞いとったやろ。のんは最後に何て言うてた?麻生雪妃が人狼やって、はっきり言い切ってたやろ。俺もその意見に賛成や。お前が人狼じゃないんやとしたら、選択肢は一つしかない」

「俺が人狼じゃあり得ないっていうのは、のんの発言から明らかだろ」

言いながら、俺はあらゆる可能性を考えようとしていた。

確かに、桜庭のんは麻生雪妃が人狼だと断定していた。

しかし、そこに何か確たる証拠があるわけではない。

あるとしたら、戸上明典の発言だ。

「戸上さんは麻生さんを占って白を出した。で、俺と片岡さんのことは占ってない。特に片岡さんは、占え占えって言われてたのに占わなかった」

「占ったら黒出さなあかんからやろ。人狼的には、最後に不確定要素を残しといたほうが勝ちの確率上がるからな」

片岡啓作は、やや苛立った表情で言った。

「つまり今、俺とお前が疑心暗鬼になって、お互い潰し合って自滅すんのを戸上は狙ってたっちゅうことや。ここで俺を疑っとったら、ほんま人狼の思うつぼやで」

「分かってる。俺も人狼は、ほぼほぼ雪妃で間違いないと思ってる。でも」

「でも何や?」

せっつくように片岡啓作は言い、俺が答えられないでいると、着物の袖を大きく翻して両手を広げた。

「早よせんかい。思ってることあるんやったら喋ってくれ」

「小鳥遊さん、よく考えてみてください」

横合いから雪妃が口を入れた。

「なぜあのとき、戸上さんは私を白だと言ったのか。私が人狼だったら自分の仲間は占わずに、ほかの人に黒を出します。そのほうが効率的に村人を減らせるからです。戸上さんがそうしなかったのは、自分を信じきっている私を終盤まで残して、最後の生贄にするためです」

彼女の指が一閃し、真っすぐに片岡啓作を指さした。

「ラストウルフは片岡さんです」

「アホか。そんなわけあるかい」

片岡啓作の表情に怒気がこもる。

終盤戦、自分の命のかかった場面で、さすがに表情の仮面が剥がれてきた。

考えれば考えるほど分からなくなってきた。人狼は片岡啓作か、麻生雪妃か。

麻生雪妃で間違いないと思っていたけれど、話を聞いていると、まさかという思いも拭いきれない。

片岡啓作のことも、だんだん疑わしく思えてくる。

ターンごとに話が途切れ、照明が消えて切り替わっているから、さほど時間が経過したわけでもないのに前後のやりとりが思い出しづらい。

頭がもやもやして、何か大切なことを忘れているような気がする。
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