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【6日目】
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『桜庭のん、二票』
スポットライトに彩られ、桜庭のんの表情は清冽だった。
はっきりとした視線を感じて目をやると、彼女は俺と目を合わせ、頷いてみせる。
大丈夫だよと励まされているような気もしたし、しっかりしてよと叱られているような気もした。
同い年の女の子なのに、ひどく大人びている。
『戸上明典、三票』
こうなってくると、無記名投票の意味もなくなってくる。
入れたのは俺、片岡啓作、桜庭のんの三人だ。
『よって、本日処刑されるのは戸上明典です。処刑対象者は最後に、三十秒以内で発言することができます。沈黙したままでも構いません』
戸上明典は背筋を伸ばし、やや首を左に傾けて語り出した。
「残念だよ……。とても残念だ」
その横顔には本物の痛切さが宿っていたので、思わず心臓が凍りつく。
だってそうだろ?これで間違っていたら、俺はこの手で村人を敗北に追いやったということになるんだ。
夜に襲撃されて死ぬ分には、防ぎようがないし仕方がない。
でも処刑で間違えた相手を選んだら、戦犯は俺たち村人になる。
いっそのこと、早く死んでたほうがよかったのかもしれないな。吊られるにしろ噛まれるにしろ。
そうしたら無用な疑いは招かなかっただろうし、墓場から気楽に観戦できたんだ。
自分の判断のミスが敗北に直結するなんて、そんな恐ろしい瀬戸際に立たされることもなかった。
「油断するなよ。それと、絶対諦めるな。最後の最後まで絶対に」
戸上明典は言った。
よく通る、胸を打つ響きだった。
誰に向けて語られたのか、そのときは分からなかったけれど、後から考えてみるとそれは俺たち全員への言葉だったのかもしれない。
そのメッセージは、この上なくストレートに飛び込んできて、いつまでも心の奥で反響していた。
「約束だぞ」
その言葉を最後に、戸上明典の姿はこの場から消えてなくなった。
『処刑が終了しました。プレーヤーは夜の行動を開始してください』
スポットライトに彩られ、桜庭のんの表情は清冽だった。
はっきりとした視線を感じて目をやると、彼女は俺と目を合わせ、頷いてみせる。
大丈夫だよと励まされているような気もしたし、しっかりしてよと叱られているような気もした。
同い年の女の子なのに、ひどく大人びている。
『戸上明典、三票』
こうなってくると、無記名投票の意味もなくなってくる。
入れたのは俺、片岡啓作、桜庭のんの三人だ。
『よって、本日処刑されるのは戸上明典です。処刑対象者は最後に、三十秒以内で発言することができます。沈黙したままでも構いません』
戸上明典は背筋を伸ばし、やや首を左に傾けて語り出した。
「残念だよ……。とても残念だ」
その横顔には本物の痛切さが宿っていたので、思わず心臓が凍りつく。
だってそうだろ?これで間違っていたら、俺はこの手で村人を敗北に追いやったということになるんだ。
夜に襲撃されて死ぬ分には、防ぎようがないし仕方がない。
でも処刑で間違えた相手を選んだら、戦犯は俺たち村人になる。
いっそのこと、早く死んでたほうがよかったのかもしれないな。吊られるにしろ噛まれるにしろ。
そうしたら無用な疑いは招かなかっただろうし、墓場から気楽に観戦できたんだ。
自分の判断のミスが敗北に直結するなんて、そんな恐ろしい瀬戸際に立たされることもなかった。
「油断するなよ。それと、絶対諦めるな。最後の最後まで絶対に」
戸上明典は言った。
よく通る、胸を打つ響きだった。
誰に向けて語られたのか、そのときは分からなかったけれど、後から考えてみるとそれは俺たち全員への言葉だったのかもしれない。
そのメッセージは、この上なくストレートに飛び込んできて、いつまでも心の奥で反響していた。
「約束だぞ」
その言葉を最後に、戸上明典の姿はこの場から消えてなくなった。
『処刑が終了しました。プレーヤーは夜の行動を開始してください』
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