THE LAST WOLF

凪子

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【6日目】

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人狼にとって昨晩は、ほぼ勝ちが確定した状態だった。

残る人間のうち、存在しているのは村人、占い師、騎士の三種類。

占い師は騎士が守りに行く可能性が高いから、狙うのは騎士か普通の村人になる。ここまではセオリーどおりだ。

騎士は毎晩一人を人狼の襲撃から守れるが、自分自身を守ることはできない。

ゆえに人狼にとっては、騎士を噛みに行くのが最もローリスクハイリターンな行動になる。

だが、あの時点で騎士が生き残っているのか、それが誰なのかということは全く分からなかった。

ゆえに人狼の選択肢としては、桜庭のんが言ったとおり『騎士っぽい人』、あるいは『騎士が守らないであろう人』を狙えばそれでいい。

役職上、騎士は絶対にカミングアウトしてはならない。

吊られそうになったとしても、騎士だと名乗り出ると人狼に有利な情報を与えてしまうので、黙ったまま死ねとさえ言われている。

だから目立った言動をして疑われ、処刑対象にならないよう、潜伏するのが基本だ。

だが、その行動特性は潜伏している人狼にも共通するため、なかなか振る舞い方が難しい。

俺が口数が多くなかったのは、単に頭の回転が遅くて話についていけなかったり、誰が人狼なのか分からなくて困っていただけだけど、人狼側から見るとそれが騎士っぽく思えたらしい。

日高巳継も、俺を騎士だと疑っていたのだろう。

逆にもし騎士じゃなかったとしても、日高巳継に投票された俺を、騎士が素直に守りに行くとは考えなかったに違いない。

確かに俺が騎士だったら、裏をかいて別の人間を守ると思う。

だから人狼は俺を襲撃対象に決定した。

そして桜庭のんは人狼の動きを読み、俺を護衛対象に選んだのだ。

「九割方負けだなって思ってたけど、もしここで襲撃を防げたらワンチャンあるなと思って、そこに賭けたの。人狼が歩君を襲いに行く可能性に」

二択だったけどね、と桜庭のんは言った。

「昨日の昼に、『俺が人狼なら私を殺すと思う』みたいな発言してたでしょ?戸上さん。だから本当に私を殺したら、自分が人狼だって疑われると思ったんだよね。だからあえて私のことを置いといたんだろうけど、完全に裏目に出たね」

「ちょっと待ってくれ。全く意味が分からないぞ」

戸上明典が初めて狼狽を見せた。
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