ＴＨＥ ＬＡＳＴ ＷＯＬＦ

【６日目】

77

桜庭のんが騎士！

予想もしていなかった俺は、ただただ口をあんぐり開けることしかできなかった。

「対抗はいないのかな？」

戸上明典が問いかけて俺を見る。

俺は大きく首を横に振った。

「この状況で騎士ですって名乗り出るほど、おまぬけさんじゃないよねー。人狼さんも」

と言いながら、桜庭のんの視線ははっきりと戸上明典に向いていた。

「昨日の晩、私を襲撃すればよかったのに。そしたら、あなたたちの勝ちだったんだよ」

「何でそれを俺に言うのかな」

戸上明典は苦笑している。まるで年の離れた兄が妹を見るように。

「この期に及んでまだ言い逃れする気？往生際が悪いぞー」

いたずらっぽく笑っているが、桜庭のんの目は全く笑っていない。

「ちょ、ちょっと待ってくれ、のん。お前、昨日、誰守ったんや？」

何とかして状況に追いつこうと、片岡啓作が口を挟んだ。

状況を飲み込めていないのは俺も一緒だったので、桜庭のんのほうを見る。

「歩君だよ」

事もなげに彼女が俺を指さしたので、俺は仰天した。

「俺！？」

「そう」

桜庭のんは頷いた。

「日高さんが吊られたとき、歩君に投票したって言ってたでしょ？だから多分、人狼の二人は歩君を噛むんじゃないかなと思って」

「え、でも、何で俺？」

俺は自分を指さした。

「人狼的には、あの夜殺すのは誰でもよかったんだよ。『騎士が守ってる人』以外なら、誰でもね。騎士を殺すのがベストだけど、生きてるか死んでるかも分からないし、死んでる可能性が高いと思ってたんじゃないかな。
で、生き残ってる三人のうち最も口数が少なくて、騎士の可能性が高い歩君を襲いに行ったわけ」