75 / 121
【5日目】
73
しおりを挟む
「ランダムは人狼側に有利になるだけです。誰か一人に指定すべきかと思います」
「日高にしよう」
片岡啓作が言った。
「日高が人狼やって可能性に賭けるしかない」
「でも、それだと日高さんが狂人だった場合、負けになりますよ」
俺が言うと、
「ほんならお前にするか?小鳥遊」
片岡啓作に物すごい目で睨みつけられる。
「あんたっていう選択肢もあるだろ」
思わず俺はかっとなって言い返した。
「別に俺でもいいよー」
日高巳継がのんびりと言った瞬間、鐘の音が鳴り響いた。
『制限時間が終了しました。プレーヤーは今後、一切の発言をしないでください』
ゲームマスターの声は、当たり前だけど全く変わらない。
こちらがどんなに追いつめられていても、どんなに余裕がなくても。
墓場にいる連中は、今どうしているだろうか。
俺たちが喧々諤々と言い争っているのを、どんなふうに見つめているのだろう。
向こうからは、何も知らない俺たちはさぞかし滑稽に映るに違いない。
『端末を使って、本日処刑する人物に投票してください。制限時間は一分です』
俺は端末を開いた。
半分が空になった座席を見つめ、片岡啓作のアイコンをタップする。
さっき、日高巳継は俺でもいいと言った。俺が吊られてもいいよと。
これは人狼だとしたら、絶対に出てこない台詞だ。
人狼二、人間三で夜を迎えれば、人狼側は勝ったも同然なのだから。
もちろん彼は村人でもない。村人なら、自分が吊られたら負けるこの状況で、吊られていいと言うはずがない。
つまり日高巳継は狂人だ。彼を吊っても負けるだけだ。
【この人に投票しますか?】
時計は残り十秒を切っている。祈るような思いで俺はイエスのボタンを押した。
残り六人。ゲーム開始からちょうど半数になった。
それはすなわち、一票の重みが倍になっていることを意味する。
失敗は許されない。
「日高にしよう」
片岡啓作が言った。
「日高が人狼やって可能性に賭けるしかない」
「でも、それだと日高さんが狂人だった場合、負けになりますよ」
俺が言うと、
「ほんならお前にするか?小鳥遊」
片岡啓作に物すごい目で睨みつけられる。
「あんたっていう選択肢もあるだろ」
思わず俺はかっとなって言い返した。
「別に俺でもいいよー」
日高巳継がのんびりと言った瞬間、鐘の音が鳴り響いた。
『制限時間が終了しました。プレーヤーは今後、一切の発言をしないでください』
ゲームマスターの声は、当たり前だけど全く変わらない。
こちらがどんなに追いつめられていても、どんなに余裕がなくても。
墓場にいる連中は、今どうしているだろうか。
俺たちが喧々諤々と言い争っているのを、どんなふうに見つめているのだろう。
向こうからは、何も知らない俺たちはさぞかし滑稽に映るに違いない。
『端末を使って、本日処刑する人物に投票してください。制限時間は一分です』
俺は端末を開いた。
半分が空になった座席を見つめ、片岡啓作のアイコンをタップする。
さっき、日高巳継は俺でもいいと言った。俺が吊られてもいいよと。
これは人狼だとしたら、絶対に出てこない台詞だ。
人狼二、人間三で夜を迎えれば、人狼側は勝ったも同然なのだから。
もちろん彼は村人でもない。村人なら、自分が吊られたら負けるこの状況で、吊られていいと言うはずがない。
つまり日高巳継は狂人だ。彼を吊っても負けるだけだ。
【この人に投票しますか?】
時計は残り十秒を切っている。祈るような思いで俺はイエスのボタンを押した。
残り六人。ゲーム開始からちょうど半数になった。
それはすなわち、一票の重みが倍になっていることを意味する。
失敗は許されない。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います
<子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。>
両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。
※ 本編完結済。他視点での話、継続中。
※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています
※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
生まれ変わっても一緒にはならない
小鳥遊郁
恋愛
カイルとは幼なじみで夫婦になるのだと言われて育った。
十六歳の誕生日にカイルのアパートに訪ねると、カイルは別の女性といた。
カイルにとって私は婚約者ではなく、学費や生活費を援助してもらっている家の娘に過ぎなかった。カイルに無一文でアパートから追い出された私は、家に帰ることもできず寒いアパートの廊下に座り続けた結果、高熱で死んでしまった。
輪廻転生。
私は生まれ変わった。そして十歳の誕生日に、前の人生を思い出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる