THE LAST WOLF

凪子

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【5日目】

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「裏の裏の裏をかいて、桜庭さんと日高って可能性もあるわけか」

戸上明典が鋭く目を細める。

「そんな可能性はないよ」

桜庭のんの表情が強張った。

「多分賛同されないと思うけど、噛まれるかもしれないから先に言っとくね。私、やっぱり戸上さんが黒だと思う。もし私が死んだら戸上さんと麻生さんを疑って。戸上さんが白を出して、生きてるのってこの子しかいないし」

俺は戸上明典と麻生雪妃を交互に見た。

そういえば、この二人を積極的に疑ったことはなかった。

だって戸上明典は明らかに真の占い師だし、その戸上明典が白を出した麻生雪妃は、ほぼ白で間違いないと思ってるから。

ここを疑わなきゃいけないとなると、状況はふりだしに戻ったも同然だ。

「何で明らかに怪しい日高や小鳥遊やのうて、ロリータちゃんと戸上なんや?俺からしたら、怪しい二人をかばってるようにしか見えんで」

片岡啓作が疑いの目を桜庭のんに向けている。

「だって多分、日高さんは狂人だから。吊っても意味ないし、日高さんと小鳥遊君が結託してる感じはゼロだし。かといって啓ちゃんも村っぽいし。だったら残ってるの、この二人しかいないから」

と言って、桜庭のんは戸上明典と麻生雪妃を指さした。

「そらないわ。だって仮に戸上が人狼やった場合、誰が真の占い師になんねん?日高は明らかに偽やろ」

「多分、最初のほうに死んだ人だよ。碓氷さんか、古川さんか、小泉さん。占い師をカミングアウトする暇がなかったのか、する気がなかったのかは知らないけど」

だったら。俺は考えた。

桜庭のんの言うことが正しければ、今占い師として出ているのは狂人と人狼ということになる。

人狼が二名、占い師というポジションにつくことは考えにくい。

場にいる複数の占い師を全員処刑する作戦――《ローラー》もしくは《ロラ》という――になったとき、共倒れになる可能性があるからだ。

でも、そんなことがあり得るだろうか?戸上さんが真じゃないなんてことが?

「俺がもし人狼なら、まず真っ先に俺に不利な発言をする人を噛むよ。例えば桜庭さん、君みたいに」

戸上明典が笑顔で言った。

「うん。だから今、思ったことを言ってるの。今晩あなたに殺されるかもしれないから」

桜庭のんも、一歩も引かずに言い返す。

「時間がありません。処刑する人を決めないと」

時計を見て麻生雪妃が言った。
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