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【3日目】
48
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「人狼かって聞かれて、はいそうですって答える人なんているわけないじゃん」
桜庭のんは、けらけらと無邪気に笑った。
「ね?歩君」
突然声をかけられて、俺は思わず肩をびくっとさせてしまった。
「お前さっきから挙動不審だな。喋んねえし」
野村忠司が俺に鋭い視線を注いでくる。
「吊っとくか?」
「でも、せっかく戸上さんが黒を出してくださったんだから、今回は佐藤さんを処刑するのがいいんじゃないかしら」
頬に手を当て、斎内紫帆はにっこりと微笑む。
「俺も賛成や。何より、おっさんが全く否定せえへんのが怪しい」
矛先を向けられて、佐藤和男は「うっ」と言葉を詰まらせた。
「分かってるか?さっきから、あんた人狼やって言われてるんやで。もしほんまに村人やったら、真っ先に違うって主張するところやろ。『戸上が偽物で決定や』言うて。
俺さっきからずっとその言葉待ってたんやけど、あんた何も言わんから人狼やな」
「ち、違います」
ようやく声を上げ、佐藤和男は勢いよく席を立ち上がった。
「私は人狼じゃありません!」
『ゲーム中は席を立たないでください』
ゲームマスターに注意され、壁際の衛視たちに銃を向けられ、慌てて着席する。
大きく肩を上下させ、無精ひげのはえた口許には汗が光っていた。
草食動物を思わせる目が、今はきょときょとと激しく中空をさまよっている。
「確かに弁解するには遅すぎるな」
野村忠司も片岡啓作の言葉に賛同した。
「待って。一応、佐藤さんの話も聞いとこ?何か言いたいことがあったら言ってみてよ」
隣の席から桜庭のんの大きな瞳に覗き込まれ、佐藤和男はさらに息を荒くさせた。
「私……私は……」
俺は時計が無情に秒数を進めていくのを見つめていた。十秒――二十秒――三十秒。
じりじりするほど時が流れたが、佐藤和男の唇から意味のある言葉は出てこない。
桜庭のんは、けらけらと無邪気に笑った。
「ね?歩君」
突然声をかけられて、俺は思わず肩をびくっとさせてしまった。
「お前さっきから挙動不審だな。喋んねえし」
野村忠司が俺に鋭い視線を注いでくる。
「吊っとくか?」
「でも、せっかく戸上さんが黒を出してくださったんだから、今回は佐藤さんを処刑するのがいいんじゃないかしら」
頬に手を当て、斎内紫帆はにっこりと微笑む。
「俺も賛成や。何より、おっさんが全く否定せえへんのが怪しい」
矛先を向けられて、佐藤和男は「うっ」と言葉を詰まらせた。
「分かってるか?さっきから、あんた人狼やって言われてるんやで。もしほんまに村人やったら、真っ先に違うって主張するところやろ。『戸上が偽物で決定や』言うて。
俺さっきからずっとその言葉待ってたんやけど、あんた何も言わんから人狼やな」
「ち、違います」
ようやく声を上げ、佐藤和男は勢いよく席を立ち上がった。
「私は人狼じゃありません!」
『ゲーム中は席を立たないでください』
ゲームマスターに注意され、壁際の衛視たちに銃を向けられ、慌てて着席する。
大きく肩を上下させ、無精ひげのはえた口許には汗が光っていた。
草食動物を思わせる目が、今はきょときょとと激しく中空をさまよっている。
「確かに弁解するには遅すぎるな」
野村忠司も片岡啓作の言葉に賛同した。
「待って。一応、佐藤さんの話も聞いとこ?何か言いたいことがあったら言ってみてよ」
隣の席から桜庭のんの大きな瞳に覗き込まれ、佐藤和男はさらに息を荒くさせた。
「私……私は……」
俺は時計が無情に秒数を進めていくのを見つめていた。十秒――二十秒――三十秒。
じりじりするほど時が流れたが、佐藤和男の唇から意味のある言葉は出てこない。
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