ＴＨＥ ＬＡＳＴ ＷＯＬＦ

【２日目】

28

「日高巳継ひだか・みつぐでーす。大学生やってまーす。今日はよろしくお願いしまーす」

ふわふわと間延びした声で言い、薄っぺらい笑顔を見せる。

日高巳継は金髪パーマにピアスやネックレスをつけ、原宿ファッションに身を包んだ若者だった。

目のくりっとした甘めの顔立ちでスタイルもよく、そのまま雑誌のモデルと言っても通用しそうだ。

あんまり頭はよくなさそうだけど。

「碓氷遼太うすい・りょうた」

日高巳継の自己紹介が終わるなり、食い気味に言ったのは彼だった。

年齢は日高巳継と同じくらいだけど、碓氷遼太のほうが日高巳継より少し背が低い。

線の細い神経質そうな若者で、縁なし眼鏡をかけて黒いリクルートスーツを着ている。

集団面接に来た就活生って感じだ。

「悪いけど、今回は僕たち村人が勝たせてもらうから。人狼は大人しく死んで」

唐突な殺戮宣言さつりくせんげんに、一瞬場の空気が凍る。

「てか、自己紹介でしょ？人狼見つけるのは後だよね」

口を挟んだのは碓氷遼太の席から左に二つ行った席の、制服を着た女の子だった。

碓氷遼太が不機嫌そうに黙り込んでしまったので、

「あのう……自己紹介させていただいてよろしいでしょうか」

おずおずと申し出たのは、気の弱そうなおじさんだった。

彼は何度か碓氷遼太のほうを確認したが、彼は返事もせずそっぽを向いているので、

「わたくし、佐藤和男さとう・かずおと申します。このようなゲームに参加させていただくことになり、大変恐縮しております。皆さんの足を引っ張らないよう努める所存ですので、何とぞよろしくお願い申し上げます」

深々と頭を下げる姿が堂に入っていて、この人はプロだなと俺は思った。

このゲームのじゃなくて、頭を下げるプロね。

それぐらい自然な動作で、もう何百回何千回と頭を下げてきたんだろうなって思わせるお辞儀だった。

頭を下げる相手が誰で、その理由がお礼なのか謝罪なのかは分からないけれど。

佐藤和男は毛玉の浮いた茶色のセーターに、ぼろぼろで長さの足りてないジーパンという、休日のおっさんスタイルだった。

自己紹介が終わった後も、何度も周囲にぺこぺこと頭を下げている。