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夏の黎明
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店の裏手の川べりまでやってくると、京介はすぐさま切り出した。
「で、何しに来たの?」
豊かな胸の前で腕を組み、涼子は傲然と笑う。
「七年ぶりに再会した相手に対して、その言い方はないんじゃない?」
「自業自得だろ」
吐き捨てるように京介は言った。
「恨み節なら聞かないわよ」
素っ気なく言い捨て、涼子はフェンスに体を寄せて川に目をやる。
「宗介から、あんたが医者にもならず変な店やってるって聞いたからさー、どんなのか覗いてやろうと思って」
「邪魔してやろうの間違いじゃないの」
「さあ?それはどうかしらね」
身長が百七十センチ近くある涼子だが、それでも京介にすれば見下ろすことができる相手だ。
しかし、見下ろしているにも関わらず、いつも気圧されているのは京介のほうだった。
涼子は来た方角を振り向いて指さし、
「あの店、随分立地のいいとこにあるけど、土地と建物は誰の名義?」
京介が黙っていると、涼子は髪をかき上げて言った。
「どうせまた父親に買ってもらったんでしょ。いくつになっても玩具を買ってもらう子供ね」
辛辣な言い草だったが、京介は慣れているのか無反応で立ち尽くしている。
涼子の目に失望がよぎった。
「……あんたがこれまで、自分の力で成し遂げたことって何よ?」
「さあ?」
京介は軽く肩をすくめる。
「いつもそうやってへらへら笑って、やり過ごしてきたんでしょ。これからもそれで済むと思ってるんでしょう。……そういうとこ、何も変わってない」
「どうかな」
涼子は重ねて何か言いかけたが、途中で諦めたのか、「ま、いいわ」とため息まじりに呟いた。
「で、何しに来たの?」
豊かな胸の前で腕を組み、涼子は傲然と笑う。
「七年ぶりに再会した相手に対して、その言い方はないんじゃない?」
「自業自得だろ」
吐き捨てるように京介は言った。
「恨み節なら聞かないわよ」
素っ気なく言い捨て、涼子はフェンスに体を寄せて川に目をやる。
「宗介から、あんたが医者にもならず変な店やってるって聞いたからさー、どんなのか覗いてやろうと思って」
「邪魔してやろうの間違いじゃないの」
「さあ?それはどうかしらね」
身長が百七十センチ近くある涼子だが、それでも京介にすれば見下ろすことができる相手だ。
しかし、見下ろしているにも関わらず、いつも気圧されているのは京介のほうだった。
涼子は来た方角を振り向いて指さし、
「あの店、随分立地のいいとこにあるけど、土地と建物は誰の名義?」
京介が黙っていると、涼子は髪をかき上げて言った。
「どうせまた父親に買ってもらったんでしょ。いくつになっても玩具を買ってもらう子供ね」
辛辣な言い草だったが、京介は慣れているのか無反応で立ち尽くしている。
涼子の目に失望がよぎった。
「……あんたがこれまで、自分の力で成し遂げたことって何よ?」
「さあ?」
京介は軽く肩をすくめる。
「いつもそうやってへらへら笑って、やり過ごしてきたんでしょ。これからもそれで済むと思ってるんでしょう。……そういうとこ、何も変わってない」
「どうかな」
涼子は重ねて何か言いかけたが、途中で諦めたのか、「ま、いいわ」とため息まじりに呟いた。
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