リエゾン~川辺のカフェで、ほっこりしていきませんか~

凪子

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春の宵

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「あんたパティシエ?」

「はい」

そう答えた途端、胸がずきりと痛んだ。

本が好きかと聞かれたときより、ずっと勇気の要る答えだった。

――私は……。

知らず、握りしめた指に力がこもる。

――私は本当に、パティシエを名乗っていいんだろうか。

「ありがとうございましたー!」

いきなり店の奥から大声が響いて、桜は肩をびくっとさせた。

少年も興を削がれたらしく、そそくさと踵を返して店を出ていく。

彼が去り、ドアについた鈴の音が鳴りやむと、店の奥から大柄な男がぬっと姿をあらわした。

「松田さん」

桜は男を睨みつけた。

「何でああいうことするんですか」

「は?何が」

「とぼけないでください。お客さん、びっくりして帰っちゃったじゃないですか」

「俺はお客さまがお帰りだったから、ありがとうございましたーって挨拶しただけだし」

「まだ喋ってる途中だったでしょ」

「何?お前、男に飢えすぎて高校生ナンパしてたわけ?」

「違います!私はただ、あの子が」

「おーい、どしたどした」

京介がやってきて、柔和な笑みで二人の間に割って入る。
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