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終章
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「ルベリエ教官。あ、もう教官じゃないんだっけ。ルベリエ少佐」
「中佐だっての。お前、今わざと間違えたろ」
唇の端をつねって思いきり引っ張られ、フィンは涙目で、
「いひゃいよ、ルヘリエちゅうひゃ」
痛がっているフィンを見て、ルートは驚き、安堵している自分に気づいた。
ルベリエも同じことを思ったのか、
「新鮮だな。ぶん殴っても蹴っても、けろっとしてたのに」
「酷いよ中佐。痛いの知っててやるんだもん」
「ちょっと背も伸びたんじゃないか」
「そうなんだ!二センチぐらいだけど」
フィンはぱっと目を輝かせる。
「そりゃよかった。せいぜい毎日、牛乳飲むこったな」
気さくな調子でルベリエは言い、それから少し黙って二人をしみじみと見つめた。
「……たった四人しか、卒業させてやれなかったな」
すまないと、寂しそうな目が謝っていた。
「その分優秀な人間が残ったから、いいんじゃないですか」
「相変わらず小生意気な奴だな」
ルベリエは不遜なルートの額を小突く。
そして腕を回して二人の肩を抱き、言った。
「入軍おめでとう」
軍人になどなるものではないと言った。
お前らは全員、俺が潰すと言った。
そのルベリエが今、心からの喜びを込めて、切なくなるほど優しい声で言っている。
一緒にいたいと思った。
心の底から、彼らと共に生きていきたいと。
今は、それだけあれば十分だった。
「俺より先に死ぬなよ」
頭に手を置いて言ったルベリエに、
「安心してください。俺もこいつも相当しぶといですから」
請け合うルートの口許に、驚くほど美しい微笑みが浮かんでいる。
ルベリエが指摘する前に、
「うそ。お姫様が笑ってるじゃん」
明るい声が弾け、レッドとユリシスの二人が駆け寄ってくる。
「あれ、挨拶回りは?」
フィンが尋ねると、レッドが手を乱暴に振って、
「ああ、もう面倒くさいし話長いから、なしにしようってユリシスが」
「違うだろ。レッドが疲れただの休みたいだの言うから、僕は仕方なく」
「そうだったっけ。まあ何でもいいじゃん」
ユリシスの反論を軽く受け流し、レッドが笑う。
「中佐だっての。お前、今わざと間違えたろ」
唇の端をつねって思いきり引っ張られ、フィンは涙目で、
「いひゃいよ、ルヘリエちゅうひゃ」
痛がっているフィンを見て、ルートは驚き、安堵している自分に気づいた。
ルベリエも同じことを思ったのか、
「新鮮だな。ぶん殴っても蹴っても、けろっとしてたのに」
「酷いよ中佐。痛いの知っててやるんだもん」
「ちょっと背も伸びたんじゃないか」
「そうなんだ!二センチぐらいだけど」
フィンはぱっと目を輝かせる。
「そりゃよかった。せいぜい毎日、牛乳飲むこったな」
気さくな調子でルベリエは言い、それから少し黙って二人をしみじみと見つめた。
「……たった四人しか、卒業させてやれなかったな」
すまないと、寂しそうな目が謝っていた。
「その分優秀な人間が残ったから、いいんじゃないですか」
「相変わらず小生意気な奴だな」
ルベリエは不遜なルートの額を小突く。
そして腕を回して二人の肩を抱き、言った。
「入軍おめでとう」
軍人になどなるものではないと言った。
お前らは全員、俺が潰すと言った。
そのルベリエが今、心からの喜びを込めて、切なくなるほど優しい声で言っている。
一緒にいたいと思った。
心の底から、彼らと共に生きていきたいと。
今は、それだけあれば十分だった。
「俺より先に死ぬなよ」
頭に手を置いて言ったルベリエに、
「安心してください。俺もこいつも相当しぶといですから」
請け合うルートの口許に、驚くほど美しい微笑みが浮かんでいる。
ルベリエが指摘する前に、
「うそ。お姫様が笑ってるじゃん」
明るい声が弾け、レッドとユリシスの二人が駆け寄ってくる。
「あれ、挨拶回りは?」
フィンが尋ねると、レッドが手を乱暴に振って、
「ああ、もう面倒くさいし話長いから、なしにしようってユリシスが」
「違うだろ。レッドが疲れただの休みたいだの言うから、僕は仕方なく」
「そうだったっけ。まあ何でもいいじゃん」
ユリシスの反論を軽く受け流し、レッドが笑う。
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