護国の鳥

凪子

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秋の章

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ほかの面々はとっくにゲームを終え、メンバーを替えたり解説や感想戦をして過ごしている。

監視役のルベリエが席を外しているため、室内の空気は自由度が高かった。

「世界は欺瞞に満ちている」

ユリシスの表情には、苦悩の色がありありと表れていた。

「何もかも嘘ばかりだ。軍だって真の公平、平等とは程遠い。紛争などなかったことにして、見せかけの平和ばかりを取り繕って」

淀みなく、ルートは白のクイーンの急所を突く。

「改革が必要なんだ。この国が変わるためには、まず軍が変わらなくちゃいけない。真に平等で、真に公平な世界のために」

「……それが翼の会とやらの信念か」

とうとうルートの一手が、白のキングの喉首に突き刺さった。

一命を取り留めようと、身代わりのナイトが矢面に立つ。

「ルート。翼の会に入ってくれないか」

懇願するユリシスを、ルートは冷静な面持ちで眺めている。

「今はまだ夢物語にすぎないけれど、僕は軍に入り、誰もが幸せで豊かで心から笑えるような世界を必ず創り上げてみせる。理想を実現するためには、より多くの仲間が必要なんだ。君ほど優秀な人材がいてくれれば、この国を変えることだって不可能じゃない。
今すぐにとは言わない。でも、考えてみてほしい」

即座に返す刀で斬りつけられると予想して、ユリシスはうつむいた。

だが、予想に反してルートは黙したまま盤面に目を注いでいる。

沈黙に飽きたころ、ようやくルートが口を開いた。

「……あんた、生まれたときからあいつと一緒にいるんだろう」

一瞬、ルートの言葉の趣旨がつかめず、ユリシスは当惑した。

「レッドのことかい?そうだよ、幼馴染だ」

はぐらかされたのかと思っていると、ルートは溜息まじりに言った。

「十五年も一緒にいるのに、ちっともあいつのことを分かっていないんだな」

ルートの目はユリシス自身ではなく、その瞳に映る歳月をたぐっていた。

「あんたが考えているのは、自分のことばかりだ」
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