護国の鳥

凪子

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秋の章

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「俺が生き残れたのは、ユリシスが俺を選んだからだ」

どういうこと、とフィンが尋ねた。

「レッドの家のことを、ユリシスが決めるの?」

レッドは軽妙な表情で頷いた。

「主家の跡取りの坊っちゃんが、たまたま遊び相手に選んだのが、なぜか俺だった。だから俺はユリシスの御目付役として仕え、結果的にフラクタル家の跡目を継ぐことが許された。
俺のほかにも兄弟はわんさかいたし、モルガン家に仕えてるのはフラクタル家だけじゃない。ユリシスの従者の候補は、それこそ掃いて捨てるほどいた。
けど、どういう選考基準だったのかは知らないが、俺が一番のお近づきになったってわけ」

「ほかの、跡継ぎになれなかった兄弟はどうしてるの?」

「死んだよ」

レッドは乾いた口調で言った。

「一人残らずな」

厳粛な横顔は、フィンの口をつぐませるのに十分な重みを持っていた。

「まあ、あいつは、ちっとも分かっちゃいないんだろうけどさ。人一人の人生を生かすも殺すも自分次第なんだって、いつまでたっても自覚できない、困った奴だよ」

組んだ腕を頭の後ろに回し、のんびりとした口ぶりでレッドは言った。

「レッドはユリシスのことが嫌いなの?」

問われてわずかに目を細め、レッドはしばらくしてから口を開いた。

「……どうかな。正直、よく分かんね。物心ついたころから一緒にいて、今じゃ家族よりずっと近いからな。好きとか嫌いとか、そういう感情すら湧いてこないっていうか」

影のように寄り添い、どんなときも傍にいるのが普通だった。

けれど、本当の意味でお互いを好きかと問われると、それすら確かな実感はない。

自分はユリシスの、何を知っているのだろう。

「ユリシスに、軍人になるのやめたらって言ったんでしょう」

レッドは息を呑んだ。

「お前、それ誰から聞いた」

「ギルベルトが言ってたよ。レッドはユリシスをブジョクしたんだって。それでユリシス、すごく怒ってるんだって」

「……ギルベルトねえ」

レッドは周到な目で溜息をつく。

「ねえ、何でそんなこと言ったの?」

フィンはレッドを下からすくうように覗き込んだ。

「ユリシス、いつも成績いいじゃん。ルートには負けるけど」

レッドはゆるゆると首を振る。
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