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秋の章
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薬のせいか随分と眠っていたらしく、目が覚めると午後一時すぎだったのには驚いた。
医務室には自分とラグランジュしかおらず、フィンはとっくに自室に戻ったという。
「君のことを、とても心配していたよ」
茶目っ気を含んだ笑顔で告げられ、ルートは目を逸らした。
「早く帰って、安心させておあげ」
「ありがとうございました」
頭を下げて出ていこうとすると、
「ルート君」
扉の前で立ち止まり、ルートは肩越しに振り向いた。
ラグランジュが真っすぐにこちらを見据えている。
睨むような凝視に、ルートはたじろいだ。
「大切な人をつくることを、恐れちゃいけない」
ラグランジュの表情には真理の凄味があった。
「君の孤独は、選ばれし者の孤独だ。誰かと分かち合うことは不可能かもしれない。
けれど、孤独を抱えたままでも、人と関わっていくことはできるんだよ」
見透かされているような気がして、ルートは彼を直視することが憚られた。
「先生は」
口の中がからからに渇いていた。
「いるんですか。その……大切な人が」
ラグランジュの表情は不思議だった。
その質問を予想していたようにも見えたし、不意打ちを食らったようにも見えた。
「昔、少しね」
過去に置いてけぼりにされた面持ちでそう言って、ラグランジュは静かに瞑目した。
医務室には自分とラグランジュしかおらず、フィンはとっくに自室に戻ったという。
「君のことを、とても心配していたよ」
茶目っ気を含んだ笑顔で告げられ、ルートは目を逸らした。
「早く帰って、安心させておあげ」
「ありがとうございました」
頭を下げて出ていこうとすると、
「ルート君」
扉の前で立ち止まり、ルートは肩越しに振り向いた。
ラグランジュが真っすぐにこちらを見据えている。
睨むような凝視に、ルートはたじろいだ。
「大切な人をつくることを、恐れちゃいけない」
ラグランジュの表情には真理の凄味があった。
「君の孤独は、選ばれし者の孤独だ。誰かと分かち合うことは不可能かもしれない。
けれど、孤独を抱えたままでも、人と関わっていくことはできるんだよ」
見透かされているような気がして、ルートは彼を直視することが憚られた。
「先生は」
口の中がからからに渇いていた。
「いるんですか。その……大切な人が」
ラグランジュの表情は不思議だった。
その質問を予想していたようにも見えたし、不意打ちを食らったようにも見えた。
「昔、少しね」
過去に置いてけぼりにされた面持ちでそう言って、ラグランジュは静かに瞑目した。
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