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夏の章
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部屋のドアノブに手をかけたところで、不審を感じてルートは動きを止めた。
中から人の気配がする。
身構えるや否や、ドアが開いて派手な赤毛が目に飛び込んできた。
「よっ、お疲れさん。まあ入れや」
我が物顔で部屋に招き入れたレッドの脛に、ルートは痛烈な蹴りを入れた。
レッドが「いってえ!」と悲鳴を上げる。
「出ていけ」
「ごめん、お邪魔してるよ」
申し訳なさそうに言ったのはユリシスだった。
「さっきルベリエ教官から連絡があったんだ。フィンのことで」
「お前らがいない間に抜き打ち検査するっていうから、急いでコレとかコレとか隠してやったんだぜ?ちっとは感謝しろっつうの」
レッドは指の間に挟んだカードとリボンを、左右に振ってひらひらさせた。
「おチビの奴、かわいそうに、あやうく死ぬところだったんだって?」
黙っているルートの肩に手を置くと、訳知り顔で、
「迂闊だったな、ルート姫。誰が作ったか分からないものには口をつけない、常識だろ?
しかも、普通に考えてユージェちゃんが俺らに差し入れなんかするはずないのにさ」
「黙れ」
ルートは苛立ちを露わにした。
「聞きたいことがあるんだ」
ユリシスは膝を詰めてルートと正対すると、生真面目な表情で言った。
「包み紙とカードは君の机の上に置いてあった。でも、君はそれを食べなかったんだね」
「それがどうした」
「危険だと分かってて、どうしてフィンを止めなかったんだい」
紳士的で穏やかな表情に、時折ちらちらと疑いの影が差している。
「さっきユージェニーに会ったよ。覚えがないと言っていた。とても驚いていたし、嘘じゃないと思う」
「だろうな」
ルートは呟いた。
敵はユージェニーの事情を知っていて利用したのだ。
中から人の気配がする。
身構えるや否や、ドアが開いて派手な赤毛が目に飛び込んできた。
「よっ、お疲れさん。まあ入れや」
我が物顔で部屋に招き入れたレッドの脛に、ルートは痛烈な蹴りを入れた。
レッドが「いってえ!」と悲鳴を上げる。
「出ていけ」
「ごめん、お邪魔してるよ」
申し訳なさそうに言ったのはユリシスだった。
「さっきルベリエ教官から連絡があったんだ。フィンのことで」
「お前らがいない間に抜き打ち検査するっていうから、急いでコレとかコレとか隠してやったんだぜ?ちっとは感謝しろっつうの」
レッドは指の間に挟んだカードとリボンを、左右に振ってひらひらさせた。
「おチビの奴、かわいそうに、あやうく死ぬところだったんだって?」
黙っているルートの肩に手を置くと、訳知り顔で、
「迂闊だったな、ルート姫。誰が作ったか分からないものには口をつけない、常識だろ?
しかも、普通に考えてユージェちゃんが俺らに差し入れなんかするはずないのにさ」
「黙れ」
ルートは苛立ちを露わにした。
「聞きたいことがあるんだ」
ユリシスは膝を詰めてルートと正対すると、生真面目な表情で言った。
「包み紙とカードは君の机の上に置いてあった。でも、君はそれを食べなかったんだね」
「それがどうした」
「危険だと分かってて、どうしてフィンを止めなかったんだい」
紳士的で穏やかな表情に、時折ちらちらと疑いの影が差している。
「さっきユージェニーに会ったよ。覚えがないと言っていた。とても驚いていたし、嘘じゃないと思う」
「だろうな」
ルートは呟いた。
敵はユージェニーの事情を知っていて利用したのだ。
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