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夏の章
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――出入り口が閉鎖されていた。なのに、時計は狂うことなく動いていた。
つまり、誰かがここを行き来して調整を行い、再び時計台を封鎖したことの証拠だ。
そんなことができるのは学園内部の人間しかいない。
だとするとフィンの言ったとおり、ここに何かが隠されている可能性は高い。
分かっているのに足が動かない。どうしても、ここから先に進もうと思えない。
「大丈夫だって。俺にしっかりつかまってな。何があってもこのレッドが姫をお護りしますよ」
調子づいたレッドが無理やり背中を押し、ルートは抵抗あえなく連行された。
冷や汗が背中を濡らし、口の中に苦い唾が込み上げる。
嫌な予感がする。物すごく嫌な予感が。
螺子が巻かれてゼンマイが作動し、秩序を守り時を刻む振り子の音が鼓動を速めていく。
「中は意外と広いんだね」
先頭を行くユリシスが物珍しげに言う声音が、幾重にも塔の中をこだまする。
「長いな、階段」
数階分移動したあたりで、レッドが飽き飽きしたように呟いた。
平坦な石造りの階段の頂上には小さな踊り場があるばかり、さして変わったところもない構造である。
四人が踊り場で腰をおろして休んでいると、
「あ、ねえ。何かあるよ」
と、壁にある出っぱりに気づいたフィンが、何の気なしにそれを押した。
するとズシンと重い衝撃が走り、時計塔の内部が振動し始めた。
「何やったんだよ、チビ」
レッドが詰め寄ると、
「えへへ。分かんない」
フィンは悪びれもせず笑っている。
「ったく、いい加減に」
「待て、レッド」
言いかけたレッドを制したのはユリシスだった。
「何か動いてる」
つまり、誰かがここを行き来して調整を行い、再び時計台を封鎖したことの証拠だ。
そんなことができるのは学園内部の人間しかいない。
だとするとフィンの言ったとおり、ここに何かが隠されている可能性は高い。
分かっているのに足が動かない。どうしても、ここから先に進もうと思えない。
「大丈夫だって。俺にしっかりつかまってな。何があってもこのレッドが姫をお護りしますよ」
調子づいたレッドが無理やり背中を押し、ルートは抵抗あえなく連行された。
冷や汗が背中を濡らし、口の中に苦い唾が込み上げる。
嫌な予感がする。物すごく嫌な予感が。
螺子が巻かれてゼンマイが作動し、秩序を守り時を刻む振り子の音が鼓動を速めていく。
「中は意外と広いんだね」
先頭を行くユリシスが物珍しげに言う声音が、幾重にも塔の中をこだまする。
「長いな、階段」
数階分移動したあたりで、レッドが飽き飽きしたように呟いた。
平坦な石造りの階段の頂上には小さな踊り場があるばかり、さして変わったところもない構造である。
四人が踊り場で腰をおろして休んでいると、
「あ、ねえ。何かあるよ」
と、壁にある出っぱりに気づいたフィンが、何の気なしにそれを押した。
するとズシンと重い衝撃が走り、時計塔の内部が振動し始めた。
「何やったんだよ、チビ」
レッドが詰め寄ると、
「えへへ。分かんない」
フィンは悪びれもせず笑っている。
「ったく、いい加減に」
「待て、レッド」
言いかけたレッドを制したのはユリシスだった。
「何か動いてる」
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