護国の鳥

凪子

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春の章

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「リングレーが自主退学したよ」

数日後、剣術の授業で道着に着がえる最中、胸当てを装着しながらユリシスが言った。

「仏さんと同室だった奴か」

応じたのはレッド、軽々とサーベルを持つ仕草がさまになっている。

「ああ。随分と悩んでいたようで、引き留めたんだが、どうにもできなかった」

「つくづくお人よしだね、お前も」

レッドは呆れたように言った。

「生徒の間でも動揺が広がってる。ハンツやフラムも迷っているようだった」

「放っとけよ。弱い奴は落ちるんだ」

「そうは思わない。僕たちは縁あって一緒に士官を志す仲間だ。もっと助け合うことができれば、脱落者だって減るはずだ」

レッドが度し難いものを見つめる目をして口を開きかけると、隣で、

「あれれ?変になっちゃった」

道着の着方を間違え、腰のサーベルのホルダーを左右逆に吊っているフィンが、じたばたと見苦しくもがいていた。

「ちょっと待って。じっとしてるんだよ」

ユリシスは脇にしゃがみ込み、丁寧に絡まった固定具を解いてやった。

「ありがとう、ユリシス」

「どういたしまして」

班を組むようになってから、授業では基本的に四人で行動するようになった。

模擬戦闘訓練や山登り、夜間行軍なども行われ、リーダーのユリシスを中心として、四班は非常に優秀な成績を収めていた。

剣術では構えや基本動作、技や防御についてひと通り型を身につけ、今日は試合形式で実技訓練を行う日であった。
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