護国の鳥

春の章

22

午前中は座学、学科が四時限行われる。

学ぶ内容の幅広さと難易度は最高峰を誇る。

数学、国語、古代文字、軍事心理学、化学、物理、地学、幾何学、戦争史、作戦術、戦略、地政学、測量術、防諜、工学、医学などは基礎として、さらにはヴァイオリンやピアノなども含めた音楽、美術、社交ダンス、礼儀作法全般、チェスやトランプ、ビリヤードなどの室内遊戯といった素養も含まれる。

新人士官が配属されるのは大抵、皇宮の警備で、皇族や貴族といった社会的地位の高い人間の警護の中で経験を積むことになる。

そのような際には当然、ふさわしい身なりや振る舞いが要求されるというわけだ。

「このぐらい嗜たしなんでて当然だろ。なあ？ユリシス」

初めて踊るワルツに四苦八苦している候補生を前に、レッドは哄笑まじりに言った。

ユリシスは憮然と黙っている。

ルートの足を踏みつけたフィンが、慌てて謝った。

「ごめんね、ルート」

ルートは返事もせずにそっぽを向く。

指示されたとおりそつなくこなしながらも、彼の顔には『馬鹿らしい』とありあり書いてあった。