護国の鳥

凪子

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春の章

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「げほっ……!ゴホッ、ゴホッ」

解放されたフィンは嘔吐寸前おうとすんぜんの咳き込みを繰り返し、肺から空気が漏れる音が室内に響いた。

辺りは寒々しい沈黙に密封みっぷうされていく。

ようやく教壇に立った教官は、百名のえある士官候補生たちを虫けらのように一瞥いちべつすると、

「勘違いしてるようだから教えておいてやる」

蹴り飛ばされた痛みに悶絶もんぜつしているユリシスだったが、プライドがそうさせるのか、何とか体勢を起こして教官を睨みつけた。

「まず最初に、お前らは無能で無価値なゴミクズだ。ここは、お前らが卒業するまでに少しでもまともな人間になれるよう矯正するための施設だ。遊園地でもなけりゃ保養所でもない。

規則と上官の命令には絶対服従、違反者は厳罰。

人権、プライベート、娯楽、自由時間、そんなものは一切ないと思え」

威圧的な語調で言うと、教官はぐるりと教室を見渡し、

「帰りたい奴は今すぐ帰れ。俺が許可する」

先ほどまでのお祝いムードとは打って変わった気づまりな静寂せいじゃくの中、多くの者がうつむいている。

心細げに周りを見る者、今にも泣き出しそうになる者。
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